2012 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞における選択的染色体分配に対する放射線の影響評価
Project/Area Number |
23310039
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00195744)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 幹細胞 / 選択的染色体分配 / 放射線の生物影響 / p53遺伝子 |
Research Abstract |
幹細胞は、1)発がんの起源になること、また、2)がん組織中にがん幹細胞が存在すること等の観点から、発がんの標的細胞として重要である。本研究は、幹細胞におけるランダム染色体分配と選択的染色体分配とのバランスに放射線がどのような影響を及ぼすのかを明らかにし、さらに、その影響によって幹細胞の発がん感受性がどのように変化するのかを明らかにすることを目指す。平成24年度は、1)神経幹細胞における選択的染色体分配を厳密に検出する方法の検証と、これを用いて2)幹細胞における選択的染色体分配の制御機構にp53遺伝子が果たす役割について調べた。また、3)培養条件下における神経幹細胞の存在割合の変動も調べた。神経幹細胞を含むニューロスフェア細胞における選択的染色体分配は、DNA鎖を5-エチニル-2’デオキシウリジン(EdU)で2回ラベル後、5-ブロモ-2’デオキシウリジン(BrdU)で1回ラベルし、その後2核細胞を形成させる方法で検証した。その結果、選択的染色体分配を行う細胞の割合は、1.2±0.28%(95%信頼区間=0.64-1.76%)であった。これに対して、p53ノックアウト(KO)マウス由来ニューロスフェア細胞では、選択的染色体分配を行う細胞の割合は0%であった。このことは、選択的染色体分配の制御にp53タンパク質が関与していることを示唆している。そこで、p53遺伝子RNAiを細胞に導入してp53遺伝子の発現をノックダウン(KD)したところ、選択的染色体分配を行う細胞の割合が0%になることを確認した。さらに、幹細胞マーカーであるCD133発現を指標にして培養条件下での神経幹細胞の存在割合を調べたところ、低栄養培地ではCD133陽性細胞の存在割合が増加することが分かった。これに対し、放射線に被ばくすると、CD133陽性細胞の存在割合は著しく低下することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究は、ほぼ当初の予定に沿って進んでいる。しかしながら、当初の予定以上に解析に時間を要した項目は、神経幹細胞における選択的染色体分配を厳密に検出する方法の検証である。その理由は、ニューロスフェア細胞中の神経幹細胞の存在割合を培養下で、一定に保つための条件が明確でない点にある。培養環境の微妙な変化により、神経幹細胞の存在割合が変化することにより、検出される選択的染色体分配を行う細胞の存在割合が変動することが分かった。この幹細胞の存在割合を変動させる要因は現在も不明であるため、培養条件に最大の注意を払いながら、今後の研究を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下の3項目について取り組む。 1.ニューロスフエアにおける神経幹細胞の存在割合に対する放射線の影響 ①ニューロスフェア中の神経幹細胞の存在割合がX線照射によって低下する現象を検証する。神経幹細胞の存在割合は、幹細胞マーカーであるCD133の発現をフローサイトメーターを用いて定量化する。②特に、線量依存性、及び被ばく後の細胞分裂回数との関係を解析する。 2.ニューロスフェアの培養条件と神経幹細胞の存在割合の関係 ①神経幹細胞は低栄養培地中で、その存在割合が増加する可能性が示唆されている。②この結果を踏まえて、低栄養培地条件下での神経幹細胞の存在割合と放射線被ばくとの関係をCD133発現を指標に調べる。 3.選択的染色体分配の制御機構におけるp53遺伝子の役割の評価 ①選択的染色体分配を行うニューロスフェア細胞が、p53野生型マウス由来細胞では数%見られたが、p53ノックアウト(KO)マウス由来細胞では全く見られないことが分かった。②そこで、p53野生型細胞のp53遺伝子発現をp53RNAiを用いてノックダウンすることにより、選択的染色体分配へのp53遺伝子の関わりについて検証する。
|
Research Products
(9 results)