2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規微生物反応の制御による環境低負荷型畜産排水処理技術
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23310050
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
細見 正明 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90132860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 昭彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30434327)
周 勝 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50451985)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水田 / 飼料イネ / 畜産排水 / メタン / 亜酸化窒素 / メタン生成古細菌 / 脱窒性メタン酸化細菌 / 水管理 |
Research Abstract |
本研究では畜産排水を施肥した飼料イネ水田におけるCH4およびN2Oの同時削減を目的とした。削減手法として、水管理では施肥前落水を、施肥方法では後半低負荷施肥を提案した。施肥前落水とは追肥前に落水を行う水管理であり、CH4排出抑制を目指した。落水により土壌中の酸化物を増加させた後に追肥を行うことで、酸化物を利用する微生物とCH4生成古細菌との間で畜産排水中の有機物を巡り競合が起きる。この競合によりCH4排出抑制が期待される。一方、後半低負荷施肥とは栽培の後半に低い窒素負荷での施肥を行う方法であり、N2O排出抑制を目指した。これらの仮説を検証するために、試験圃場にて実験を行ったところ、栽培期間中のCH4排出量に関しては、施肥前落水系は慣行系に比べ前半低負荷系では14.9%、後半低負荷系では76.5%の削減ができた。CH4排出量とFe2+変化量との間には関連性が見られず、仮定した競合がCH4排出抑制の主要な原因でないことが示された。N2O排出量に関しては、前半低負荷系からはN2Oの排出が確認できたのに対し、後半低負荷系からはN2Oの排出は確認できなかった。これらの温室効果ガスの排出総量を二酸化炭素等量で比較した場合、施肥前落水と後半低負荷を組み合わせた系は慣行系の水田と比べて84.1%の温室効果ガス削減率を示した。このような大幅な温室効果ガス削減の理由を考察するために、土壌中のCH4酸化細菌、脱窒性CH4酸化細菌およびCH4生成古細菌の存在量を定量PCRにより評価したところ、CH4酸化を行う細菌群量は水田圃場の間で差異は確認されなかった。一方、CH4生成古細菌の量は慣行系では約3倍増加したのに対し、CH4が大幅に削減された施肥前落水と後半低負荷を組み合わせた系ではCH4生成古細菌量が実験期間中に増加しないことが示され、CH4生成量とCH4生成古細菌の菌数に相関が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた3つの検討項目は進度こそ違いがあるものの、予定した計画が適切だったため、計画通りに進展している。特に、メタンおよび亜酸化窒素の大幅削減が可能な水管理が明らかになったことは大きな成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った水田圃場試験により、メタン生成古細菌の存在量は施肥前落水によって抑制されることが示され、水田からの温室効果ガスの削減手法として有用であることが示された。一方、メタン酸化を担うメタン酸化細菌および脱窒性メタン酸化細菌の活性や生理生態に関する知見は未解明な点が多いため、平成25年度は中干しや施肥前落水を行った水田土壌におけるメタン酸化細菌および脱窒性メタン酸化細菌の量や活性を定量的に評価する。これより、メタン酸化細菌および脱窒性メタン酸化細菌の活性を向上させ、かつ、メタン生成古細菌の活性を抑制可能な水管理方法を見出す。
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Research Products
(5 results)