2012 Fiscal Year Annual Research Report
水プラズマを新しい反応場として利用する廃棄物処理プロセスの開発
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23310052
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡辺 隆行 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40191770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂田 正哉 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (30431521)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 熱プラズマ / 水プラズマ / 大気圧プラズマ / 廃棄物処理 / 有機物分解 |
Research Abstract |
直流放電にて水のみから成る熱プラズマを用いて,有機系物質を分解するシステムを作製した。水溶性の有機物の分解としてフェノール分解,難水溶性物質の1-デカノールをO/Wエマルションとして分解を行うシステムを開発した。 工場等から出る排水処理中には,微量でも極めて有害な環境汚染物質が含まれている。この環境汚染物質の処理が重要な課題となっている。現在は有機物を含む排水処理には生物的処理方法が広く利用されているが,この生物的処理方法ではフェノールやトルエンなどの芳香族化合物が高濃度で含まれている場合には適用できない。 排水処理を目的として,フェノール水溶液を水プラズマによって分解することに成功し,その分解機構を明らかにした。プラズマ中では,主にO原子によってフェノールが酸化され,フェノキシルラジカルを経由して分解されることが主な反応ルートであると考えられる。一部はベンゼンを経由してギ酸やホルムアルデヒドが生成される反応ルートもある。 エマルション試料は放電領域に直接投入され,直ちに分解され,分解生成物は冷却管を通り,液相と気相に分離される。生成した分解ガスを質量分析器とガスクロマトグラフィーを用いて分析を行い,液体は高速液体クロマトグラフィーと全有機炭素計を用いて分析を行った.アーク電流値を増加させることでTOCの除去率は増加し,8 Aでは99%以上の有機物が分解された。エマルション試料の分解後の主な生成ガスは,水素,一酸化炭素,二酸化炭素,メタンであった。アーク電流値を増加しても気相中の組成に変化は見られないのは,どの条件でも水が解離して発生したO ラジカルやH ラジカルが十分に存在し,原料中の有機物に対して過剰に存在しているためである。水プラズマは水溶性物質だけではなく,難水溶性物質も効率良く分解できるので,多様な廃棄物の処理システムに適用することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水プラズマの有機物の分解に関しては,難水溶性物質をエマルションにして分解する方法,排水処理のためのフェノール水溶液の分解システムの開発に基づき,それぞれの分解機構を解明することができ,予想以上の成果があった。また,水プラズマによる数値解析に関しては,その輸送係数や熱力学物性値などを計算することができた。しかし水プラズマの流体計算については完全な解を得ることができていない。以上の点を鑑み,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
水プラズマの有機物分解実験に関しては,難水溶性の有機物を様々な界面活性剤でのエマルションで分解を行う。その分解挙動をプラズマ中の分光計測,分解後の気体と液体生成物の分析を行うことで,新しい反応場としての水プラズマを化学的に解明する予定である。水プラズマの数値解析については,物性値等のデータを得ることができたので,実験から得られたプラズマの温度分布等を利用することで,熱流体としての水プラズマの数値解析を行う予定である。
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Research Products
(16 results)