2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体電解質における分子ダイナミクスが関与した高プロトン伝導メカニズムの解明
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23310063
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
水野 元博 金沢大学, 物質化学系, 教授 (70251915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 朋智 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (30345607)
大橋 竜太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50533577)
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Keywords | 複合材料・物性 / 燃料電池 / プロトン伝導体 / 固体NMR |
Research Abstract |
本研究では,イミダゾール分子のダイナミクスが関与した高プロトン伝導機構の解明を目指す。本年度はポリビニルポスホン酸(PVPA)にイミダゾールを加えた試料(PVPA/Im)を調製し,イミダゾール分子の回転運動を固体重水素核NMRを用いて詳細に調べ,プロトン伝導との関係の解明に取り組んだ。 その結果,PVPA/Imにおいて0℃以下では,イミダゾールには小角度の回転的振動のみが起こっているが分かった。10℃以上では,イミダゾール分子の等方回転運動が観測された。10~30℃の温度範囲では等方回転運動を行っているイミダゾールと小角度の回転的振動のみが起こっているイミダゾールが存在することが分かった。これは,PVPAの非晶性部分に取り込まれたイミダゾール分子は結晶性部分に取り込まれたイミダゾール分子よりも等方回転運動が起こり易くなっていることを示している。40℃以上ではイミダゾールの均一な等方回転運動が観測された。温度が高く・なるにつれて,イミダゾールの等方回転運動が速くなり,プロトン伝導度が高くなっていくことから,イミダゾールの等方回転運動がプロトン伝導に密接に関係していることが明らかになった。 PVPA中のイミダゾールの割合を増やすと,電気伝導度が急激に高くなることが報告されている。本研究により,PVPA中のイミダゾールの割合を増やすと,イミダゾール分子の等方回転運動はより低温から起こることがわかった。この結果は,PVPAにイミダゾールを加えることにより,PVPAの高分子鎖間のパッキングが緩くなり,イミダゾール分子の動き易い空間が形成されるためと考えられる。PVPA中のイミダゾールの割合を増やすことにより,プロトン伝導のキャリアー数が増えるとともに,イミダゾール分子の運動性が向上することで,電気伝導度の急激な増大が起こるという,新規プロトン伝導体の開発に重要な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は補助金額が3割減額される可能性が9月末まであったため,分子やイオンの拡散測定用の装置(NMRプローブ)の導入が遅れたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度はフレキシブルな高分子(PVPA)中に存在するイミダゾール分子について回転運動とプロトン伝導の関係を調べた。今後は,更にPVPA中でのイミダゾール分子の拡散について調べ,プロトン伝導との関係を明らかにする。また,結晶性の高プロトン伝導体であるジカルボン酸イミダゾリウム結晶中のイミダゾール分子の運動を解析し,プロトン伝導との関係を明らかにする。
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Research Products
(5 results)