2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体電解質における分子ダイナミクスが関与した高プロトン伝導メカニズムの解明
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23310063
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
水野 元博 金沢大学, 物質化学系, 教授 (70251915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 朋智 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (30345607)
大橋 竜太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50533577)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 複合材料・物性 / 燃料電池 / プロトン伝導体 / 固体NMR |
Research Abstract |
本研究では,イミダゾールを有する高プロトン伝導物質におけるイミダゾール分子のダイナミクスが関与したプロトン伝導機構の解明を目指す。 本年度は,ジカルボン酸のアルキル基部分の長さの異なる二種類の結晶(コハク酸イミダゾリウム、セバシン酸イミダゾリウム)を調製し,固体重水素核NMRの広幅スペクトル,QCPMGスペクトル,スピン-格子緩和時間及び固体高分解能C-13 NMRスペクトルの測定を行い,イミダゾール分子の運動を詳細に調べ,プロトン伝導との関係の解明に取り組んだ。 その結果,イミダゾールには小角度の回転的振動と偽2回軸周りの180°フリップ運動が起こっていることを明らかにした。これらの運動は,セバシン酸イミダゾリウム結晶の方がコハク酸イミダゾリウム結晶よりも低温から速い速度で起こっていることが確かめられた。同じ温度ではセバシン酸イミダゾリウム結晶の方がコハク酸イミダゾリウム結晶よりも高い電気伝導性を示すことから,イミダゾール分子の回転的振動や180°フリップ運動はプロトン伝導に非常に重要であることが明らかになった。 イミダゾールを取り込んだ高分子の高プロトン伝導体では高分子鎖が構築するフレキシブルな空間での等方回転運動がプロトン伝導に関与しているが,結晶性プロトン伝導物質では,結晶内でのイミダゾール分子は強い束縛を受けており等方回転運動のような大きな運動を行うことができない。このような場合,180°フリップ運動や小角度の回転的振動は限られた空間においてプロトン移動を効率よくアシストできることが本研究の結果より明らかになった。 本研究で得られた結果は,結晶性のプロトン伝導物質を開発するうえで非常に重要な知見を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,イミダゾールを有するプロトン伝導性高分子や結晶について,イミダゾールの分子運動を詳細に調べ,高分子のフレキシブルな空間では,イミダゾールの等方回転など大きな運動がプロトン伝導に関与し,結晶のタイトな空間では,180°フリップや回転的振動など制限された運動が効率よくプロトン伝導に関与していることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトン伝導に関与した水素を重水素化しプロトン伝導経路を詳細に解析する。ジカルボン酸イミダゾリウム塩結晶においては,アルキル基部分の長さの異なる結晶を合成し,ジカルボン酸の長さや偶奇性とイミダゾール分子の運動性およびプロトン伝導性の関係を解明する。
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Research Products
(7 results)