2012 Fiscal Year Annual Research Report
クエンチングを生じないナノ構造による著しい発光増強機能の創出
Project/Area Number |
23310064
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
林 真至 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50107348)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ構造 / 微粒子 / 蛍光増強 / 有機分子 / 近接場 / 光散乱 |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画に記載した、1)増強機能を持つナノ構造作製、2)発光増強の精密測定、3)理論計算との比較、について研究を推進した。1)に関しては、微粒子層の上に色素薄膜を堆積したものとPMMA-微粒子コンポジット膜中に色素分子を分散させた2種類の試料を作製した。また、微粒子としてはBaSO4、TiO2、Si、色素としては、DCM、ローズベンガル、ナイルレッド、Alq3を用い、種々の組み合わせについて実験を行った。2)に関しては、特にPMMA-微粒子コンポジット試料について発光の全方位測定、角度分解測定、さらには拡散反射・透過スペクトルの測定を新しく導入した。3)については、近接場増強に関する計算のみならず、ランダム媒質中の光の拡散伝搬理論にもとづく蛍光強度の理論式を導入した。これらの実験及び理論から、主として以下の点が明らかになった。 ・作製した2種類のどちらの試料でも、蛍光増強の現象がみられる。 ・GaP, BaSO4微粒子は、高い蛍光増強度を示すが、Si微粒子での蛍光増強度は比較的小さい。TiO2微粒子では、かえって蛍光のクエンチングがみられる。これらは、励起波長での誘電率(または、屈折率)の虚数部の大小が関係していると考えられ、虚数部の値が小さい程、増強度が高くなる。 ・DCM、ナイルレッド、Alq3では、試料の蛍光スペクトルが参照用の試料のものとほとんど変化せず増強度の見積もりが可能であるが、ローズベンガルの場合には大きく変化してしまい、増強度の見積もりは困難である。 ・蛍光増強のメカニズムとしては、微粒子表面近傍での近接場増強以外にも、微粒子による強い光散乱によってもたらされる、光の拡散伝搬の効果が示唆される。これは、光の拡散伝搬理論に基づいた、蛍光強度の計算からも、定性的に裏付けられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿って順調に研究が進んでいる。さらに、従来には観測されていなかった有機薄膜‐微粒子コンポジット膜でも、蛍光増強の現象が平成24年度に新たに見出された。この系での蛍光増強には、従来の微粒子表面近傍での近接場増強の効果以外にも,微粒子による強い光散乱がもたらす、光の拡散伝搬の効果が関与していると考えられる。このことは、当初は全く予想していなかった新しい研究の方向性を示しており、さらなる進展が予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、かなり明確になってきたランダム媒質中での光の拡散伝搬による蛍光増強は、新しい増強のメカニズムを示唆しており、今後さらなる理論計算との比較等により、より確固たるものにする。また、来年度が、研究課題の最終年度であることに鑑み、今年度までに得られた研究成果を総合的に判断し、国の内外でほとんど例を見ない非金属系のナノ構造による蛍光増強を、一般的なものとして確立し、専門家、非専門家に広く広報する。
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Research Products
(10 results)