2011 Fiscal Year Annual Research Report
長時間トラップ型気相移動度測定法の開発とナノ物質が関与する化学反応の追跡
Project/Area Number |
23310066
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
菅井 俊樹 東邦大学, 理学部, 准教授 (50262845)
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Keywords | イオントラップ / 気相移動度 / 長時間構造変化 |
Research Abstract |
本申請計画はナノ物質などの荷電粒子を長時間トラップしながら気相移動度測定を行うことで、触媒機能や構造変化、生成過程など従来困難であった測定を可能にするものである。今年度は従来の塩水粒子に加えポリスチレン粒子の測定のためにレーザー脱離イオン化システムを導入し、長時間構造追跡測定を行った。さらに大型高分解能移動度・質量分析装置の開発のために、高度制御RF-DC電源を開発した。 気相移動度測では荷電粒子が静電場下でバッファーガスと衝突しながら移動していく速度を測定することで、荷電粒子とバッファーガスとの衝突断面積を算出し、荷電粒子の構造が推定できる。最終的には構造測定を行うことが目的であるが、荷電粒子の電荷数や想定できる構造が複数ある場合は、一意的に気相移動度から構造を推定することは出来ない。今回はこの移動度と構造の対応を詳細に調べるために、従来の塩水粒子測定に加え、新規レーザー脱離イオン化システムを備えたシステムを開発し、ポリスチレン粒子を2時間にわたり測定した。塩水粒子は時間と共に空気中の水分を吸収することで、直径が増大し移動度が減少したが、ポリスチレン粒子はイオン化直後10分間までに移動度が上昇したが、10分後から2時間まで移動度は変化しなかった。ポリスチレン粒子には吸湿性はなく構造が安定しているため、10分後から移動度が変化しないことは、構造と電荷数が変化しないことを示している。これにより、長時間移動度測定を行う上で電荷数の変化を無視できることと、移動度測定の長時間安定性という今後の活用に大きな実験的保証が示された。イオン化直後から10分までの移動度の上昇は、イオン化時に加熱変形されたポリスチレン微粒子が元の球形に戻ることを示唆している。このように測定の確度および精度が示された。 このように基本的測定が確立した上で、さらに高分解能測定および質量分析機と接続するために高度制御RF-DC電源を分子科学研究所装置開発室と共同で開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定システムの基盤となる長時間高精度・高安定性が実験的に示されたことと、レーザー脱離イオン化というナノ物質では基本的イオン化手法が気相移動度測定でもほとんど変更なしに使用できたことが大きな進歩である。さらに最終的な大型高精度移動度・質皇測定システムの開発のキーデバイスとなる高度制御RF-DC電源が分子科学研究所装置開発室の協力を得て、マイクロコントローラーの通信インターフェースを初めとして順調に開発されつつある。このように装置開発の上で重要な進展が見られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初計画にあるように大型高精度移動度・質量分析システムを完成させる。質量分析システムとの結合が大きな鍵となるために、数値シミュレーションその他で十分な事前解析を行い、開発を効率化する。1ユニットの開発に成功した電源を量産することも鍵となる。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Ultraviolet photoelectron spectra of Er2@C82 (I), Er2@C82 (III), Er2C2@C82 (I)and Er2C2@C82 (III)2012
Author(s)
T.Miyazaki, R.Sumii, H.Umemoto, H.Okimoto, Y.Ito, T.Sugai, H.Shinohara, T.Zaima, H.Yagi, S.Hino
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Journal Title
Chemical Physics
Volume: 397
Pages: 87-91
DOI
Peer Reviewed
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