2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23310076
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 琢治 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80169185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 大輔 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60589399)
田中 啓文 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90373191)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 単一分子電子素子 / カーボンナノチューブ / ニューロン類似素子 / 単一分子磁石 / ポルフィリンアレイ |
Research Abstract |
機能性単一分子の電子機能とその構造の関係を明らかにすることを目的としている。特に、分子自体が荷電状態を取ることができる系を用いることで、負の微分抵抗、メモリー、スイッチング、閾値素子、磁気抵抗などの機能を単一~少数の分子で実現することを目指している。 今年度の成果は、次の通りである。 1.カーボンナノチューブにPMo12O40分子を吸着した系で、負の微分抵抗(NDR)が見られることを昨年度見いだしていたが、これをネットワーク化して電圧を掛けると、一定周期のスパイク状の電流が流れることが分かった。これは、生物の神経と類似の振る舞いで、NDRネットワークがニューロンネットワークと等価な電子回路となっていることを示唆しており、興味深い。 2.オクタエチルポルフィリン(OEP)のテルビウムダブルデッカー錯体の、プロトン体、アニオン体、ラジカル体、カチオン体を作り分け、プロトン体以外では、単一分子磁石としての性質を持つことを明らかにした。また、これらの化学種をHOPG表面上で単分子膜を作成し、その分子像を走査トンネル顕微鏡で観察して、化学種により単位格子の大きさが異なることを明らかjにした。これは、ナノグラフェン/単一分子磁石によるスピン制御素子作成の基礎的な知見として重要である。 3.複雑な分子系を容易に合成するために、鈴木カップリング、園頭カップリングを基本反応とする、逐次反応を行うためのポルフィリン誘導体の合成を行った。この反応を用いて3量体までのポルフィリンアレイを自由に作れる事を確認していたが、その吸収、発光スペクトルが、中心原子の並び順が異なると変わってくることを発見した。また、キー中間体の合成収率を大幅に改善する反応スキームが見いだされ、これにより大スケールでの合成が可能になった。 4.メカニカルブレークジャンクション法の装置が完成し、単分子電気特性計測に目処が立つようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
負の微分抵抗素子のネットワーク化により、神経様の電気特性が見られる事を明らかにした点は、大きな進展である。 単一分子磁石の構造/物性相関についても、かなり明らかになってきた。 逐次合成法によるポルフィリンアレイの合成が、収率、反応スケールとも実用的になったため、種々の分子合成が容易になった。これを用いて、メカニカルブレークジャンクション法の装置で単一分子電気特性を順に計測することで、構造/物性相関の解明が急速に進展するものと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.負の微分抵抗ネットワークによる、神経様電気素子の特性を分子構造から制御できるようにする。 2.単一分子磁石を用いた、スピンバルブ素子を実現する。 3.種々の中心金属が種々の並び方をしているポルフィリンアレイを合成し、その単一分子電気特性を明らかにする。その中で、閾値素子、負の微分抵抗、メモリーなどの性質を見いだす分子を探索する。
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