2012 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンナノ結晶への不純物ドーピングによる新機能性材料の創成
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23310077
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤井 稔 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00273798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今北 健二 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50598430)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半導体ナノ結晶 / ドーピング / 光学応答 |
Research Abstract |
本研究は、シリコン(Si)のナノ結晶に極少数の不純物をドーピングすることにより、不純物制御と量子サイズ効果を組み合わせてSi結晶が本来持たない機能を実現しようとするものである。以下に本年度の成果を記す。1)ビスマス(Bi)イオンとSiナノクラスターの相互作用に関する研究を実施した。Biドープシリカ薄膜(膜厚6nm)とSiナノクラスターを埋め込んだシリカ薄膜(膜厚3nm)を交互に堆積した多層膜構造の作製とその光学特性評価を行った。その結果、多層膜界面でBi近赤外発光センターが形成されること、及びSiナノクラスターがBi近赤外発光センターに対する光増感剤として機能することを見出した。2)BとPを同時ドーピングしたSiナノ結晶を埋め込んだシリカ薄膜をフッ酸溶液でエッチングすることにより、同時ドープSiナノ結晶を溶液中に取り出し、その物性評価を行った。溶液中の同時ドープSiナノ結晶は、表面修飾処理無しで高い極性溶媒分散性を示した。同時ドープSiナノ結晶の表面には高B濃度層が形成されており、その負の表面電荷により高い極性溶媒分散性を保持していることが明らかになった。4)シリコンゲルマニウム(Si1-xGex)混晶ナノ結晶のバンド内遷移について、フェムト秒レーザーを用いたポンププローブ法で研究を行った。その結果、混晶化による波数ベクトル保存則の緩和にAuger過程が影響を受けることを明らかにした。5)Siナノ結晶は、バルクSi結晶に比べて非常に大きい3次非線形光学効果を示す事が知られている。今年度は、BもしくはBとPを同時ドーピングしたSiナノ結晶の非線形光学応答について研究を行い、不純物ドーピングがSiナノ結晶の非線形光学応答増大の有効な手段であることを示した。さらに、BiドーピングによりSiナノ結晶の3次非線形光学応答が大幅に増大することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進展している。本研究の目的は、シリコン(Si)のナノ結晶(ナノクラスター)に極少数の不純物をドーピングすることにより、不純物制御と量子サイズ効果を組み合わせてSi結晶が本来持たない機能を実現しようとするものであるが、本研究により興味深い物性が次々と明らかになりつつある。Biドーピングに関しては、SiナノクラスターがBi近赤外発光センターに対する光増感剤として機能することを見出すと共に、Siナノクラスター-Bi系では従来の常識に反してAlやNa等を添加得ること無くBiの近赤外発光が得られる事を見出した。今年度に開発した多層膜構造は、発光層と励起光吸収層を別々に設計できるため、昨年度に研究したBiイオンとSiナノ結晶を同時ドーピングした構造に比べて、設計の自由度が高い。この成果は、Siベースの導波路型広帯域光増幅器実現の可能性を広げるものである。また、当初の計画では予想していなかったが、BiドーピングがSiナノ結晶の非線形光学応答を大幅に増大することを初めて見出した。BとPを同時ドープしたSiナノ結晶のコロイドについては、作製方法や物性解明が大幅に進み、研究は順調に進展している。B,P同時ドープSiナノ結晶の塗布による高電気伝導度ナノ結晶薄膜作製の準備が整いつつある。当初計画以外の展開として、フェムト秒レーザーを用いたポンププローブ法によりSi系ナノ結晶のバンド内遷移過程に関する基礎研究を行っており、ドーピングがAuger過程に影響を初めて実験的に示した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、上記研究を推進する予定であるが、それぞれのサブテーマについて特に重点的に研究を行う項目について以下に記す。Biドーピングに関しては、比較的良好な発光特性が得られているが、Bi近赤外発光センターの活性化に1100℃以上の高温熱処理が必要な事が、デバイス応用上大きな問題となる可能性がある。そこで、今年度は熱処理温度の低減もしくは熱処理無しでBi近赤外発光センターを形成することを目的に研究を行う。B,P同時ドープSiナノ結晶コロイドについては、さらなる高性能化、高機能化を目指す。具体的には、サイズおよび不純物濃度制御によりバンドギャップエネルギーを広範囲(1eV程度)に制御する技術を確立する。さらに、バイオイメージング応用を目指して表面修飾処理無しで水溶媒に分散するSiナノ結晶を開発する。不純物ドープSiナノ結晶(ナノクラスター)の非線形光学応答に関しては、3次非線形光学応答に留まらず2次非線形光学応答に関する研究を開始する。特に、2次非線形光学応答が最大となる構造、組成を検討すると共に、2次非線形光学効果発現のメカニズムの解明を行う。
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Research Products
(18 results)