2012 Fiscal Year Annual Research Report
高次高調波表面光電子分光法によるグラフェン電子系の超高速ダイナミクスの解明
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23310086
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
小栗 克弥 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (10374068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 景子 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 研究主任 (40455267)
日比野 浩樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 部長 (60393740)
関根 佳明 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 研究員 (70393783)
中野 秀俊 東洋大学, 理工学部, 教授 (90393793)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 時間分解光電子分光 / エピタキシャルグラフェン / 高次高調波 / 超高速ダイナミクス |
Research Abstract |
平成24年度は、超高速表面光電子分光法による半導体表面ダイナミクス計測を中心に実施した他、過渡回折法によるグラフェンの電子位相緩和計測を進展させた。さらに、表面増強ラマン効果を用いたエピタキシャルグラフェンのラマン分光計測法をさらに深化させ、銀微粒子によるグラフェンへの影響を世界で初めて評価した。 【課題1】既存計測法によるグラフェン電子系の超高速緩和過程の計測 本課題では、主に以下の3つの研究を実施した。一番目は、昨年度実現した時間分解能100fsを有するポンププローブ型高次高調波表面光電子分光システム(TR-PES10)を用いて、GaAs表面フェムト秒ダイナミクス計測を実施、電子・正孔分離時間並びにその表面再結合時間の見積もりに成功した(NTT)。二番目は、7fsの高強度数サイクルレーザを用いた透過型過渡回折法を構築し、CVD法で作製した単層グラフェンの電子位相緩和計測を実施した。単層CVDグラフェンからの過渡回折信号をとらえることに成功し、電子位相緩和時間の予備的データを得ることに成功した(東洋大)。最後に、エピタキシャルグラフェンの評価法として用いてきた表面プラズモン増強効果を用いたラマン分光法と透過型電子顕微鏡を組み合わせ、プラズモン増強に必要な銀の微粒子によるグラフェンへの電子ドーピング量を見積もることに成功し、論文に投稿した。(NTT) 【課題2】高次高調波表面光電子分光システムの確立(NTT) H24年度は、1 kHz繰返し、パルス幅25 fsのレーザをベースにした高次高調波表面光電子分光システムにおいて、最終年度のエピタキシャルグラフェンの電子ダイナミクス計測に向け、ポンププローブ実験系の構築を実施した。また、グラフェンの表面を清浄化するため、H23年度に購入したサンプル加熱ステージを組み込んだサンプルプレパレーションチャンバを整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23~H24年度の2年間の研究遂行については、大凡当初の研究計画通りに推移していると自己評価している。まず、既存の超高速光電子分光システムの半導体を標準サンプルとして100 fs時間分解能評価実験に成功し、エピタキシャルグラフェンの超高速緩和計測の予備的データまで取得できている。さらに、1 kHz繰返し、パルス幅25 fsのレーザをベースにした高次高調波表面光電子分光システムの構築については、液体ヘリウム温度(約10K)計測系や加熱機構表面評価装置(LEED・残留ガス計測器)を備えたサンプル準備チャンバーも導入し、ポンププローブ実験系も整備した。これらの2つを最終的に合わせることにより、最終年度には、計画の主目標であるフェムト秒時間分解表面光電子分光法によるエピタキシャルグラフェンの電子ダイナミクス計測を実現することは可能であり、ここまで実現すれば層数依存性などパラメータ依存性の計測は容易である。 さらに、もう一つの目標である過渡回折法による電子位相緩和時間計測については、予備的に実施しているCVD成長単層グラフェンの計測に成功していることから、最終年度はエピタキシャルグラフェンの計測も実現可能な目途がたった。さらに本研究の当初計画にはないが、別途実験を行ったエピタキシャルグラフェンのTHz吸収分光の実験結果と理論を組み合わせ、間接的にグラフェンの位相緩和時間を見積もる手法も試みており、ディラック電子の光誘起コヒーレンスを多角的にとらえる研究として発展させている。 グラフェンのフォノンのダイナミクスについては、コヒーレントフォノン計測の進捗が進んでいないものの、表面プラズモン増強ラマン分光と透過型電子顕微鏡を組み合わせることによって、これまで計測不可であった電子ドーピング量の定量的評価が可能なことも見出しており、総じてみれば本研究は建設的に発展しているという評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、以下の2つの課題を実施し、本研究課題をまとめる。 【課題1】既存計測法によるグラフェン電子系の超高速緩和過程の計測 ①光電子分光システム(TR-PES10)によるグラフェンの基本特性計測: H24年度のGaAs表面ダイナミクス計測により、グラフェンにおいて計測すべき電子系再結合特性を測定できる見通しを得ることができた。そこで、最終年度は、H24年度における予備実験で課題として抽出した伝導帯の光電子スペクトル領域の高エネルギー分解能化を図り、当初の目標である一層エピタキシャルグラフェンの時間分解表面光電子分光計測による電子系ダイナミクス計測を実現する。②グラフェンの電子系位相緩和時間の解明:H24年度は、過渡回折法によるグラフェンの電子系位相緩和時間計測に向け、標準サンプルであるCdSの過渡回折実験を行い良好な結果を得た。さらに、CVD成長一層グラフェンをサンプルとして、過渡回折実験を実施し、グラフェンの位相緩和時間を示す予備的データを得ることに成功した。そこで最終年度は、過渡回折法による直接的計測と、間接的見積もりを組み合わせ、多角的にエピタキシャルグラフェンの位相緩和時間を解明し、グラフェン電子系の光誘起コヒーレンス特性を明らかにする。 【課題2】高繰返し高次高調波表面光電子分光システムの確立とグラフェン計測への適用 H23年度並びにH24年度までの研究により、1 kHz繰返し、パルス幅25 fsのレーザをベースにした高次高調波表面光電子分光システム(TR-PES1000)の基本セットアップはほぼ整備された。最終年度は、本システムを用いて、エピタキシャルグラフェンの電子ダイナミクス計測を実現するとともに、その層数依存性・温度依存性計測へと拡大する。
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[Presentation] Ultrafast diagnostics of photo-excited processes in solid using femtosecond laser-based soft x-ray pulse sources2012
Author(s)
K. Oguri, H. Nakano, Y. Okano, T. Nishikawa, K. Kato, A. Ishizawa, T. Tsunoi, H. Gotoh, K. Tateno, and T. Sogawa
Organizer
8th International Conference on Photo-Excited Processes and Applications (ICPEPA-8)
Place of Presentation
Rochester, U.S. A.
Year and Date
20120817-20120817
Invited
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