2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン制御による半導体レーザの閾値低減に関する研究
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23310094
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
黄 晋二 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (50323663)
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Keywords | スピン偏極 / スピン緩和 / スピン半導体レーザ / スピン注入 / 円偏光レーザ発振 / GaAs(110) / 低消費電力化 / 量子井戸 |
Research Abstract |
(110)GaAs量子井戸への電気的スピン注入を行うために、まず、GaAs(110)基板上にFe薄膜結晶をエピタキシャル成長する技術について検討を行った。半導体と磁性金属の結晶成長には異なるMBE装置を用いており、MBE装置間を移送する際の表面汚染、酸化を防ぐため、試料表面にAsパッシベーション保護膜を形成する技術を確立した。磁性金属用MBE内での熱処理によってAs保護膜を除去し、Fe膜のエピタキシャル成長を行った。成長中の反射高速電子線回折(RHEED)観察を通して、基板温度が室温付近である場合、Fe膜の成長は、まず島状に成長し、その後平坦化していくVollmer-Weber型め成長モードとなることが分かった。成長したFe膜について、X線回折測定、及び試料振動型磁力計(VSM)測定を用いた評価を行い(1)Fe膜が単結晶であること(2)Fe膜の結晶方位が、GaAs(110)上に対して面直方向、面内方向ともに整合していること(3)Fe膜の磁化容易軸は膜面内の[001]であること、が分かった。次に、このFe膜成長技術を用いて、(110)GaAs量子井戸を発光層とするスピン発光ダイオード(LED)を作製について検討を行い、デバイスプロセス技術を確立した。スピンLEDでは、トンネルバリアとしてFe/n-AlGaAsショットキー接合を利用した。外部面直方向磁場下の電流注入発光における円偏光度を測定したところ、測定温度4Kにおいて、外部磁場が2~3T付近で円偏光度の飽和が確認され、電気的スピン注入に成功した。観測された円偏光度は約5%と低い値であり、Fe/AlGaAs界面の欠陥の影響によって注入効率が低下したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としていたGaAs(110)上のFe膜エピタキシャル成長技術を確立し、Fe膜の結晶方位と磁化特性について知見を得た。また、この成長技術を用いてFe膜を用いたスピン発光ダイオードを作製し、円偏光度の評価まで研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階で得られているスピン注入効率は数%と低いため、スピンLEDの作製条件を吟味、最適化し、注入効率の向上を目指す。併せて、GaAs(110)上の垂直磁化FePt膜の形成と、これを用いたスピン注入についても研究を進める予定である。
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Research Products
(6 results)