2012 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン制御による半導体レーザの閾値低減に関する研究
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23310094
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
黄 晋二 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (50323663)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 円偏光レーザ発振 / スピン注入 / 半導体量子井戸 / GaAs(110) / InP(110) |
Research Abstract |
平成24年度の研究概要について項目別に述べる。 (1) GaAs(110)基板上FePtの成長:(110)GaAs量子井戸への電気的スピン注入を行うために、昨年度はFe/GaAsショットキー接合の形成とこれを用いたスピン注入について実験を進めたが、今年度は無外部磁場下でのスピン注入を目指して垂直磁化特性が報告されているFePtについて研究を行った。GaAs(110)基板上にFe層とPt層を交互にMBE成長し、その磁化特性を調べた。比較的高温の230℃でFePtを成長した場合に、ゼロ外部磁場での残留垂直磁化成分が観測された。これは無外部磁場でのスピン注入の可能性を示唆する結果である。しかしながら、高温成長のためにFePt/GaAsの界面において混晶化が起こり、接合特性がオーミックになってしまうことが分かった。このため、ショットキー接合におけるトンネルバリアを用いたスピン注入は困難であり、MgO層などの絶縁層を挿入する必要があることが分かった。 (2) InP(110)基板上のInGaAs/InAlAs量子井戸のMBE成長 GaAsと同じ閃亜鉛鉱構造を持つInPについても、もし良質な(110)量子井戸を形成することができれば、DPスピン緩和が抑制され長い電子スピン緩和時間を得ることができると期待される。InP基板上であれば、光通信帯で用いられている1.55マイクロメートル波長帯の量子井戸を作製できるため、円偏光でレーザ発振する面発光半導体レーザの光通信への応用が期待できる。InP(110)基板を用いて、成長温度、III/Vフラックス比等のMBE成長条件を系統的に変化させた実験を行ったところ、室温にて明瞭なフォトルミネッセンスが観測できるInGaAs/InAlAs(110)量子井戸を成長できる条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GaAs(110)基板上に残留垂直磁化成分を持つFePt電極を作製することに成功し、無外部磁場下でのスピン注入の可能性を見出すことができた。しかしながら、高温でのFePt成長における界面混晶化によってオーミック接合となり、効率的なスピン注入が難しいことが分かった。このため、MgO中間層を挿入する必要があることが分かったが、FePt/MgO/GaAs構造を作製するための技術をあらたに確立する必要があるため、スピンLEDを用いた電気的スピン注入の実験が計画よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、FePt/MgO/GaAs(110)構造を作製する技術を確立し、スピンLEDを用いた電気的スピン注入効率を評価する段階へと進めていく。併せて、InP(110)基板上InGaAs/InAlAs量子井戸における電子スピン緩和時間を評価し、InP系においてもGaAsと同様に、(110)量子井戸においてDPスピン緩和が抑制され、長い電子スピン緩和時間が得られるのか検討する。また、光通信帯での円偏光半導体レーザの応用についても検討を行う予定である。
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Research Products
(6 results)