2012 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ電極と赤外線顕微鏡を用いたリチウムイオン二次電池の安全性評価技術
Project/Area Number |
23310107
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
仁科 辰夫 山形大学, 理工学研究科, 教授 (60172673)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 安全工学 / リチウム電池 / マイクロ電極 / 内部短絡 / 赤外線顕微鏡 / 過充電 / 電解液 / 物質移動 |
Research Abstract |
1. マイクロ電極観察・評価装置の製作」、2. マイクロ電極の作成、3. リチウムイオン二次電池安全性確保技術の現状と将来計画に関する調査」を継続するが、焦点は、4. マイクロ電極を擬似金属片異物としたリチウムイオン二次電池安全性評価法の有効性の実証」に移すことを計画した。 マイクロ電極を使用した内部短絡評価は、実際に短絡させると局所的な微細線がショートにより溶融断線し、内部短絡の継続が困難な状況であった。融点の高いPtですらこの状況であり、融点が600℃程度のAlでは継続的な内部短絡の維持が困難であることが分かった。この事実は、電池内部短絡のモードについて、微細な金属粉による内部短絡とそれによる発火事故について疑問を呈する。すなわち、かなり大きな金属片の混入が内部短絡の事故となりえる。 上記事実、および内部短絡による電池内部の蓄電エネルギーの解放には電極反応速度の制限がかかる。すなわち、放電時における発火事故は電池反応速度を制限する電解液の抵抗が支配的となる。これを見積もるために、電流遮断法による電池内部抵抗の評価を行った。有限物質移動距離に対する電解液内イオン移動を表現する式を導出し、これを実際の電池系に適用したところ、Alラミネートパック型、扁平Al缶型、18650型のいずれでも電流遮断後の電池電圧の過渡応答を1mV程度の精度で表現することに成功した。その結果から考えれば、電解液の物質移動支配では電池発火に至るような高温状態にはなりにくい。 以上から電池発火事故のほとんどは、外部電源が接続されて電池内部状態に無関係に大電流を供給し続けることが可能な充電時の事故がほとんどであると考えられる。すなわち、過充電保護や充電電流の監視が電池発火事故を抑制するために必須事項であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電池内部の状況について、10μm程度の微細な金属粉や細線による内部短絡では、継続的な内部短絡の維持が困難であることを明らかにした。この事実は、電池発火事故に対する重要な示唆を与える。すなわち、発火事故に至るためには、混入する金属異物はかなりの大きさが必要であり、これが集電体と直接接触することが最低限必要な条件となることが分かった。また、放電時は電解液部のイオン移動速度が律速であり、その制限から発火事故に至るには無理があることを、電流遮断法による解析法の開発により明らかとした。すなわち、電池発火事故において考慮すべきは外部電源が接続された充電時に絞り込めばよいことを明らかにした。 ここまで条件の絞り込みができれば、あとは事故防止策として取るべき対応はかなり絞り込むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を実証するために、赤外線顕微鏡を用いた温度変化の測定を是が非でも実現したい。また、実際の電池の内部抵抗評価に有効である電流遮断法におけるイオン移動を表現する数式が、実際の電池の過電圧の過渡応答を1mV程度の精度で表現できることが分かりつつあり、電池の内部状態の解析に非常に有効であることが分かりつつある。これをさらに進め、電池の劣化診断法にまで進めたい。
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