2012 Fiscal Year Annual Research Report
クルマ社会の水害脆弱性の検証とその対応策に関する研究
Project/Area Number |
23310109
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 圭一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70273521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川池 健司 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10346934)
馬場 康之 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30283675)
石垣 泰輔 関西大学, 工学部, 教授 (70144392)
米山 望 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90371492)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 都市水害 / 自動車水難事故 / 漂流物解析 / 水理実験 / 都市域氾濫解析 |
Research Abstract |
本研究は,洪水氾濫時の車に関連する水難事故の危険性や車がもたらす災害助長特性,すなわちクルマ社会の水害脆弱性を,実物大の車模型を用いた避難実験,洪水氾濫時の車の挙動を表現する水理実験,さらに様々な数値解析手法をとおして明らかにするとともに,得られた成果をもとにその対応策を提言していくものである。 (1)車に関わる国内外の都市水害のレビュー:車が流される被害が発生した1982年の長崎水害などに着目し,どのような水理条件下で車が流されたか,また人的被害が発生したかを詳細にレビューした。 (2) 車の漂流限界実験:長方形一様断面の直線水路に小縮尺の車模型(数種類)を設置し,水理条件(流速,水深)を種々変化させて通水し,車が動き始める限界の水理条件を見出す実験を実施した。そして,その結果をもとに半水没状態の車の抗力係数を算出した。また,得られた抗力係数をもとにして,実際の車の漂流限界について考察した。その結果,流速が2m/s以上,かつ水深が0.5m以上の条件下では,セダンタイプの小型自動車が漂流しやすいことが明らかとなった。さらに,動き始めた後の車の漂流状況も詳細に観察し,ビデオ撮影し、流れ場の平均流速と車の漂流速度との関係を把握することに努めた。 (3)急傾斜都市模型での車の漂流実験:街路や交差点,街路沿いの建物を取り込んだ小規模縮尺の急傾斜都市模型に水を流して,ミニカーが漂流・衝突・堆積する様子を把握する実験を実施した。道路上に設置する車模型の位置や台数を変化させて車の移動の様子を調べたところ,交差点付近で漂流した車が停止して堆積する状況や,下流端で車が激しく重なり合うような状況が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)水理実験より,車の漂流限界に関する指標を提案することに努めた。その結果,流速が2m/s以上,かつ水深が0.5m以上の条件下では,セダンタイプの小型自動車が漂流しやすいことが明らかとなった。またその指標を京都市内での二次元の洪水氾濫計算に適用したところ,豪雨により鴨川が溢れた際には,車が漂流する危険性があることを明らかにした。この指標を用いることによって,京都市域以外でも,内水・外水氾濫時に車がどこで漂流する可能性があるか,予測することが可能となる。 (2)急傾斜市街地模型ならびにミニカーを用いた水理実験より,急傾斜市街地都市で洪水氾濫が発生したときの車の漂流挙動を検討した。その結果,交差点付近で漂流した車が停止して堆積する状況や,下流端で車が激しく重なり合うような状況が確認された。このように,定性的ではあるものの,車の漂流特性を把握することができた。 以上,車の漂流に関する二つの大きなテーマで研究がほぼ予定通りに進展していることより,研究はおおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は以下のとおりである。 (1)車に作用する流体力の実験:車に作用する流体力の実験を継続して実施する。長方形一様断面の直線水路に小縮尺の車模型(数種類)を設置し,水理条件(流速,水深)を種々変化させて通水し,半水没状態の車に作用する流体力を計測し,抗力係数を精度よく求める。また,車周辺の流速分布を計測するとともに,車に作用する流れ場の特性も明らかにする。 (2)急傾斜都市模型での車の漂流実験:街路や交差点,街路沿いの建物を取り込んだ急傾斜都市模型を用いて,洪水氾濫時に車が漂流・衝突・堆積する過程を検証する実験を継続して実施する。写真・ビデオ撮影をとおして,漂流する車の挙動の詳細を明らかにする。また氾濫流の流況を平面二次元氾濫モデルによりシミュレーション解析する。 (3)氾濫時の二輪車による避難困難度の検討:大型直線水路に水を流し,氾濫状況を模した状況で実物の二輪車を運転する体験実験を実施し,氾濫時の二輪車による避難の可能性を明らかにすることを試みる。 (4)3次元モデルによる流体力解析:上記(1)との関連で,3次元モデルのコードをもとに,部分的に水没した車の抗力係数を求める。また漂流する車の動きが表現可能なシミュレーションモデルの開発に努める。
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