2012 Fiscal Year Annual Research Report
健康被害事件での社会反応の定量化と過剰反応抑制の為のリスクコミュニケーション研究
Project/Area Number |
23310112
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
今村 知明 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80359603)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 社会の防災力 / リスク分析 |
Research Abstract |
1 食品や健康被害リスクの社会反応の分析と大規模化の促進要因抽出 (1)社会反応の定量化の試み:「福島第一・第二原子力発電所の放射性物質放出事故(以下、福島原発事故)により放射能に汚染された食品」に対する社会の反応について、テレビ報道の定量化と過去に発生した事件との比較分析を実施した。食品の放射性物質に関する報道は事故発生直後から4月中旬にかけての1ヵ月間に基準値を超える放射性物質が検出されたことなどが報道され一度ピークを迎える。その後、報道は落ち着くが7月21日に牛肉から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことを契機として再び報道量が増加し最大となる。ただ、原発事故全般の報道のピークと比較すると、5%程度である。他の食品事件のテレビ報道と比較すると、雪印食中毒事件(2000)と報道量と特徴が似通っている。両事件とも新聞報道では社会反応が長期化する傾向が見られたがテレビ報道では時間の経過とともに収束する傾向がみられ同じ事件でもテレビと新聞で反応の傾向が異なっている。 (2)リスクコミュニケーションの問題点の調査とその解決策の研究:福島第一原発に関する食品の報道は特に行政サイドの問題等報道が大規模化しやすい要素がなく、また、原発事故全般の報道量と比較するとかなり少なく、冷静な反応であるといえる。リスクコミュニケーションにおいては発表内容や伝え方を精査しミスコミュニケーションを起こさない対応が重要である。 2 社会的感受性のモニタリング手法の開発とモニタリング等の試行 過去に他の食品を対象に実施した消費者調査と同様の内容で、福島第一原発に関する食品に対する感受性調査を実施した。福島原発事故に関する食品に対するWTPは2011年8月で最低となりその後回復傾向にある。他の食品で実施した調査手法の汎用性を確認できた。今後、調査項目を一般化し、食品全般の調査が実施できる手法を開発する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに進捗しており、問題ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
・新聞とテレビの報道の比較分析とその特徴の整理を行う。 ・社会的感受性のモニタリング手法を食品全般に使える手法として一般化する。 ・上記を踏まえて、新聞、テレビ、消費者の反応それぞれの特徴を踏まえたリスクコミュニケーション手法を検討し、社会的反応を過剰に過熱させないリスクコミュニケーションのあり方を検討する。
|