2012 Fiscal Year Annual Research Report
昇降機・遊戯機械における事故抑制のための構造健全性評価システムの開発
Project/Area Number |
23310114
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
青木 義男 日本大学, 理工学部, 教授 (30184047)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 昇降機 / 構造健全性 / 予見保全 / 遠隔検知 / 残存強度評価 / 保守保全 / 遊戯施設 / 安全設計 |
Research Abstract |
平成24年度は、現行の昇降機・遊戯機械の定期検査制度における緊急課題と考えられる「構造健全性判断基準の定量化」について継続検討し、「常時の保守点検を支援する構造健全性評価システム」を実用に供するための基礎実験と改良を行った。従来の調査により重篤な事故につながりやすい「ワイヤーロープ」に注目し、製造会社で用いられている昇降機用ワイヤーロープと巻上げ機軸や吊り車の特徴、形状寸法や構成材料を調査した上で、疲労進展や破壊の初期的要因から破壊進展メカニズムを材料試験やFEMによる数値解析によって解明し、ワイヤーロープの検査基準について事故事例を踏まえた上で、詳細にわたって検討を行った。この結果、昇降機ワイヤーロープにおいては駆動シーブ以外の返し車や吊り車に対しても、ワイヤーロープとの接触による摩擦摩耗やロープ谷部・内部での繰り返し曲げ疲労が摩耗粉や環境変動によって助長されることを十分に加味した設計と保守点検を行う必要性について示唆した。 次に、常時の保守点検を支援する構造健全性評価システムの開発については、昇降機ワイヤーロープの保守点検に際して、素線切れや錆・腐食、局部摩耗などを高精度で検知し、初期的損傷や残存強度を定量的に評価できるシステムとして、新たにフェイズドアレイ型GMRセンサを用いて漏洩磁束の変動を検知する健全性評価システムを開発し、初期の素線破断、局部摩耗、浸透度の異なる錆等、従来の検査機器では検知判別が困難な条件での損傷検知実験を行った。この結果、新たに開発したセンサシステムでは、従来のホール素子型で検出が困難であった分散した素線切れ検出、谷部錆や内部素線破断についても高精度で検知が可能であること、30m/sec以下の移動速度ではノイズの影響が少なく、自走式昇降機器に開発した健全性評価システムを搭載して行った損傷検知実験でも初期損傷検知が可能であることを実証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題①「構造健全性判断基準の定量化」については当初計画していた事故故障要因の分析と安全対策についての検討のみならず、昇降機ワイヤーロープの残存強度評価実験ならびに環境劣化による強度低下の評価ならびに昇降機かご部に搭載する制御基板の振動耐久性についても構造解析と評価試験を実施し、昇降機の重要保安部品である巻上げ機軸、ワイヤーロープと吊り車などの配置と停止階数を考慮した安全設計指針ならびに保守点検における安全方策や制御基板の設置時における耐久性向上方策についても一定の知見を得ることができたため。 また、課題②「常時の保守点検を支援する構造健全性評価システム」については、当初の計画通り初期損傷検知、特に素線の内部破断や谷部の錆、素線の分散破断などの現状で困難とされる損傷診断を非破壊で可能とする新たなセンサシステムの開発に一定の方向性づけができたと同時に、実際の昇降機や遊戯施設での評価を通じた実用性の検討が実施できる段階まで到達したと考えられるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
「①構造健全性判断基準の定量化」については、現行の定期検査の業務基準に対して、検査基準項目やその検査方法について継続検討を行う。例えば、次の定期検査までに材料劣化の進展が予測される安全基準の許容限界に近い場合の判定区分の見直しや、短期間での定期検査が必要となる部位の特定などを検討すると共に、不全進行の度合を直接視認や、従来方法で特定できない要因に関する検査方法についても検査項目や安全基準に盛り込んだ定期検査報告書の改善案を検討し取り纏める。 「②常時の保守点検を支援する健全性評価システム」の開発については、フェイズドアレイ型BMRセンサシステムを利用してより判別の困難な条件での損傷評価を可能とする信号処理方法や認知判断アルゴリズムを検討する。これにはリアルタイム処理が可能な新たな信号処理手法や機械学習型の認知判断手法を応用し、その妥当性を検証する。この他、昇降機や遊戯施設では機械締結部の弛緩が一因となった事故例も見られるため、機械締結部の構造健全性評価や応力集中部の可視化に適切なセンサを用いた実機計測を行い、その有用性についても言及する。
|
Research Products
(6 results)