2012 Fiscal Year Annual Research Report
津波防災におけるグローバル・スタンダードとなりえる新たな大規模ハードウェアの開発
Project/Area Number |
23310123
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高橋 智幸 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40261599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平石 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (20371750)
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
徳重 英信 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80291269)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 潜堤 / 水理実験 / シミュレーション / コンクリート構造物 |
Research Abstract |
東日本大震災による津波被害を踏まえた新たな防災ハードウェアとして,津波潜堤を開発している.津波潜堤は沿岸部に来襲する津波エネルギーの減衰を目的として,水平方向および鉛直方向の流速を転向させ,津波自身の物理的性質を利用して運動量の減少を図る構造を検討している. このような津波潜堤を開発するために,従来の潜堤や湾口防波堤など既に設置されている津波対策構造物に関する資料収集を行うとともに,東北地方太平洋沖地震津波における被災事例や減勢効果について検討を行った.それらの検討結果を踏まえて,津波潜堤の津波減勢効果とコンクリート構造物としての研究を行なった.前者では水工学的な視点から,津波エネルギーを効率良く減衰することのできる津波潜堤の幾何学的形状を水理実験および数値シミュレーションにより検討した.後者ではコンクリート工学的な視点から,実際に津波潜堤を大水深の海域に建設する場合の各種性能について検討した. 具体的には,津波潜堤の基本形状を設計し,そのコンクリート模型を製作した.そして,平面水槽において,コンクリート模型による津波の減勢効果に関する水理実験を実施した.ただし,水理実験用コンクリート模型の製作には多くの予算と時間,労力がかかるため,次年度では,基本となる形状については水理実験で検討を行い,それから派生する多数の形状については数値シミュレーションで検討を行う予定である.そのためには水理実験と同レベルの検討を数値シミュレーションで行えることが必要となるが,3次元での数値シミュレーションを実施した結果,水理実験結果を高精度で再現することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)従来の潜堤や湾口防波堤など既に設置されている津波対策構造物に関する資料収集を行った.そして,東北地方太平洋沖地震津波における被災事例や減勢効果について検討を行った.これらの結果を踏まえて,次の津波潜堤の設計は行った. (2)津波エネルギーの減衰を目的として,湾口防波堤などが設置されているような大水深に建設する津波潜堤の設計を行った.形状としては長い勾配区間を持たせ,水平方向の流速を鉛直方向へ転向させる機能を持たせた.また,岸沖方向に進入してきた津波を津波潜堤の先端で分断し,続いて津波潜堤に沿った流れを誘起して沿岸方向へ流速を転向させ,沿岸方向に転じた流れ同士を衝突させることにより,運動量を減少させる機能を持たせた. (3)上記の設計に基づき,設計耐用年数や塩化物浸透による鉄筋腐食を防ぐための水密性,使用材料と配合などを検討して,津波潜堤のコンクリート模型を製作した.そして,コンクリート構造物としての力学的性能・耐久性能に関する検討を行った. (4)平面水槽において,(3)で作成した津波潜堤のコンクリート模型を用いて,三次元的な津波減勢効果に関する水理実験を実施した.具体的には津波潜堤の前後の水位および流速を測定することにより,津波潜提による流況の変化と減勢効果の検討を行った. (5)上記の水理実験と同様の条件で2次元および3次元の数値シミュレーションを実施し,津波潜提による減勢効果の検討を行った.2次元の数値シミュレーションにおいては従来の津波伝播解析で一般的に用いられているstaggered gridを用いたLeap-frog 法で非線形長波理論を解いた.また3次元の数値シミュレーションにおいてはVOF法を用いたCADMAS-SURF/3Dを使用した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成24年度では,単体の津波潜堤に関する水理実験および数値シミュレーションを実施してきた.しかし,津波潜堤により水平方向流速を転向させる目的は,複数の津波潜堤が連携して津波を減勢させることを期待しているためである.そこで,平成25年度では,複数の津波潜堤をさまざまな位置関係で設置した場合の減勢効果の変化を水理実験および数値シミュレーションにより検討し,各種の地形で最適となる配置を明らかにする. (2)平成24年度に設計した津波潜堤により,鉛直方向および水平方向の流速の転向は確認できたが,その度合は十分であるとは言えなかった.そこで,平成25年度では,それぞれの流速の強める形状を検討する必要がある.具体的に,鉛直方向では,より砕破が発生しやすくなるように設計し,鉛直断面での津波減勢効果の増幅を検討する.また,水平方向では,周辺の津波潜堤との連携を強めるため,より転向を促すような設計とし,水平断面での減勢効果の増幅を検討する. (3)平成24年度に実施した3次元数値シミュレーションにおいて,水理実験結果を高精度で再現できることが確認できた.そこで,平成25年度では,基本となる形状および配置については水理実験により集中して検討を行い,それから派生した多数の形状および配置については数値シミュレーションで検討を行うこととする.これにより,多くの試行錯誤ができるため,高い津波減勢効果が期待できる最適な形状および配置についての検討を行うことが可能となる.
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Research Products
(16 results)