2011 Fiscal Year Annual Research Report
核様体タンパク質結合部位解析に基づく染色体多様化機構の解明
Project/Area Number |
23310131
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒川 顕 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (20343246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 史人 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30423122)
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Keywords | 微生物ゲノム / ゲノム構造多様性 / 核様体 |
Research Abstract |
本研究は,細菌に広く分布・保存され,グローバルな転写制御のみならず,外来性遺伝子群の制御,さらにはゲノム進化に深く関わる核様体タンパク質に焦点を絞り,核様体タンパク質の結合部位を,高速シークエンサーIllumina GAIIxを用いたChIP-seq解析により,様々な細菌種にわたりゲノムワイドに比較解析することを第一の目的としている.また,細菌における核様体タンパク質とゲノムの関わり,進化過程を明らかにし,細菌ゲノム機能の変化・多様化の機構について,新たな概念の提案を行う事を最終目標に据えている.H23年度は,すでにゲノム完成配列が公開されている,実験株K-12(subgroup A),ヒト腸内常在菌SE11株(subgroup B1),SE15株(subgroup B2)の大腸菌3株において,ChIP-seq解析および比較ゲノム解析によりH-NSの結合位置を高精度に決定した.その結果,3株のゲノム配列間で良く保存されている共有ゲノム領域におけるH-NSの結合は,しばしばその領域の配列多様性が大きいにも関わらず高度に維持されており,ゲノム配列の多様化がH-NS結合位置に対して影響を与えない事が明らかとなった.また,大腸菌ゲノムで多様化が極端に進んだ領域には高頻度にH-NSが結合する傾向があり,その領域にはホストである哺乳類腸内環境において重要な役割を果たしている遺伝子が存在する事がわかった.これらの結果から,H-NSは単に遺伝子の発現抑制のみならず,遺伝子の変異蓄積を許容することによる大腸菌ゲノムの多様化さらには生息環境への適応をもたらしている事を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題はH23年度に追加採択を受けた課題であるため,H23年11月からの実験開始となった,そのため,菌株の準備,調整,ChIP-seqにおいて開始時点の遅れがあった.一方で,ChIP-seq解析パイプライン,比較ゲノム解析などバイオインフォマティクスに関しては,H23年度当初から継続して実施していたため,順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度,ゲノム決定済みのEnterobacter sakazakii, Citribacter koseri,Klebsiella pneumoniaeの3株にてChIP-seq解析を試みた.しかし,上記菌株がいずれも薬剤耐性菌であったこと,また研究協力者から得たプラスミドpACBSR-IsceIが全て組み替えを生じたものであったことから,上記菌株のH-NSにflagtagを組み込んだ組換え体の作製が困難であった.今年度はこれらを考慮し新たにEnterobacter_cloacae, Erwinia_amylovora, Pectobacterium, Salmonella_enterica, Xenorhabdus_nematophilaの5株を対象とし,H23年度に引続きChIP-seq解析を実施する.
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