2012 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素応答のメタボローム解析から新しい虚血再潅流傷害治療法の開発へ
Project/Area Number |
23310136
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
南嶋 洋司 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20593966)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低酸素 / HIF / PHD / 虚血再灌流 |
Research Abstract |
我々の身体が低酸素環境に暴露されたとき、個々の細胞は転写因子HIFの活性化を介してエネルギー代謝を“低酸素モード”に切り替え、限られた酸素を有効に利用しようとする(低酸素応答)。そのHIFもまたプロリン水酸化酵素PHDによって負に制御されているので、PHDは低酸素応答のON/OFFを決定しているスイッチ、すなわち“酸素濃度センサー”であると言える。 薬剤処理あるいは遺伝子操作によってPHDを失活させると、HIFが活性化し、細胞は“虚血再潅流傷害”などに対して抵抗性を獲得するのだが、HIFによって“低酸素モード”に切り替わった細胞内エネルギー代謝の流れの中で、どの代謝産物/代謝反応が細胞保護に奏功しているのか、完全には解っていない。その代謝反応の責任分子をメタボローム解析を駆使して突き止めて、その分子を標的とした、心筋梗塞・脳血管傷害などの低酸素応答が関与する疾患の新しい治療法の開発へと発展させることが本研究の目的である。 PHDファミリー(PHD1~PHD3)のうち、生体内ではPHD2が主にHIFを負に制御しているので、Phd2を欠損させたマウスの心臓において虚血再灌流モデルを作製し、このモデルから再潅流後の心筋組織を採取し、代謝産物解析や発現プロファイリングを行う。これらの解析データから、低酸素応答による臓器保護作用の分子メカニズムの解明を試みる。 H24年度は、心臓の冠動脈前下行枝の一時的な遮断による虚血再灌流モデルではなく、体外摘出心を塩化カリウム注入によって一時的に心停止させたのちに再灌流させるモデルを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
心冠動脈の結紮実験(LAD ligation)のモデル作製に予想を大幅に上回る時間が必要となったため、モデル作成後に予定されていた虚血再灌流後の代謝産物の変動を解析するステップに到達していない状態である。その対策としては【今後の研究の推進方策】に記載した。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】の項に記載したとおり、当初の予定の心冠動脈の結紮実験(LAD ligation)のモデルによる虚血再灌流モデルの作製に予想外の時間を要したため、代替策として着手した全心灌流停止モデル(体外摘出心による心停止・再灌流モデル)の作製を、昨年度に引きつづき進めていく予定である。
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