2011 Fiscal Year Annual Research Report
高グリコシル化タンパク質ムチンに関する革新的分析法SMMEの高度化研究
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23310154
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
亀山 昭彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 糖鎖医工学研究センター, 研究チーム長 (80415661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米澤 傑 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175002)
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Keywords | ムチン / 分子マトリクス電気泳動 / 糖鎖 / ラングミュア型 / 無水コハク酸 |
Research Abstract |
膵液・胆汁中のムチンを調べることにより、最も難治性の癌である膵胆管腫瘍の早期診断、悪性度判断の糸口が見出されると期待されているが、ムチンは分析が困難なためバイオマーカーとしてのムチン研究は手つかずの状態にある。分子マトリクス電気泳動法(SMME)は、ムチンを分析するために研究代表者が最近開発した新規分析法である。本研究では新手法であるSMMEをバイオマーカー探索に活用できるように、分離能と感度に重点をおいた高度化研究を進める。平成23年度は、(1)SMMEの物理化学的基礎、および(2)ムチンの高感度検出法の開発を実施した。 (1)については、PVDF膜の種類、ポリマーコーティング量、親水性ポリマーの種類について検討した。PVDF膜は、メーカーによってもSMMEの泳動結果に違いが生じた。ポリマーコーティングは、ラングミュア型の吸着であり、ポリマー濃度と浸漬時間をコントロールすることで再現性よくSMME膜を作成できることが判った。また、親水性ポリマーについては、これまでポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールの3者はSMMEにおいてほぼ同じ程度の効果を有すると考えていたが、接触角を測定した結果、ポリビニルアルコールが特に高い親水化効果を有することが判った。 (2)については、SMMEで分離したムチンの新規染色法を開発した。ムチンはこれまでAlcian Blueで染色されてきたが、シアル酸や硫酸基が少ない中性のムチンは染色されないという問題があった。一方、中性ムチンを染色できる過ヨウ素酸酸化シッフ塩基法では糖鎖が分解されるため染色後のムチンの糖鎖分析ができない。そこでSMME膜上のムチンをコハク酸無水物で処理した後、Alcian Blueで染色する方法を考案し検討した。この方法ではムチンの酸性度に関わらず染色することができ、かつ糖鎖分析も従来通り行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
震災の影響により7月まで実験排水が流せない状況が続き、その間、電気泳動などの水を用いる実験ができなかった。下期で集中的に実験を進めたため、全体としてはやや遅れているという程度の進捗まで回復させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目(1)分子マトリクス電気泳動の物理化学的基礎を早期に完了させ、標準となる電気泳動膜、電気泳動条件を固める。その後、検出法の高度化、分離能の高度化を進める。検出法についてはムチンのコアタンパク質の同定法の開発に重点をおく。分離能の高度化については、分子マトリクス電気泳動を用いた親和電気泳動および2次元電気泳動の開発に重点をおく。
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