2012 Fiscal Year Annual Research Report
高グリコシル化タンパク質ムチンに関する革新的分析法SMMEの高度化研究
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23310154
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
亀山 昭彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (80415661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米澤 傑 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175002)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電気泳動 / ムチン / 糖鎖 / 赤外分光法 / 電気浸透流 |
Research Abstract |
膵液・胆汁中のムチンを調べることにより、最も難治性の癌である膵胆管腫瘍の早期診断、悪性度判断の糸口が見出されると期待されているが、ムチンは分析が困難なためバイオマーカーとしてのムチン研究は手つかずの状態にある。分子マトリクス電気泳動法(SMME)は、ムチンを分析するために研究代表者が最近開発した新規分析法である。本研究では新手法であるSMMEをバイオマーカー探索に活用できるように、分離能と感度に重点をおいた高度化研究を進める。平成24年度は、①SMMEの物理化学的基礎、②ムチンの高感度検出法、および③分離能の高度化を目的とした発展型SMME法の開発を実施した。 ①については、ポリビニルアルコールの分子量、鹸化度およびポリマーコーティング量がSMMEに及ぼす影響について検討した。また、電気泳動中に伴って発生する蒸散流および電気浸透流について、各種PVDF膜の種類、ポリマーコーティング量、親水性ポリマーの種類について検討した。PVDF膜は強い電気浸透流を発生するが、コーティング後は電気浸透流がほぼ完全に抑制されることが判明した。 ②については赤外分光検出を検討した。PVDF膜は1500cm-1以上の赤外領域でほぼ透明であるため、PVDF膜上のムチンのIRマッピングを検討した。SMME膜を2枚のフッ化カルシウム板で挟むことにより、膜状のムチンスポットをIRにてイメージングすることができた。しかし、感度の面では従来の色素による染色法に及ばず、高感度にIRによって検出するためには更なる工夫が必要であることが判明した。また、昨年度に開発したムチンのコハク酸‐アルシアンブルー染色法を論文としてまとめた。 ③についてはレクチン親和SMME法を検討した。レクチンをPVDF膜に吸着させた後、親水性ポリマーをコーティングすると吸着していたレクチンが剥離するケースがあることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗体を用いたムチンコアタンパク質の同定法の開発が、予想よりも難しく難渋している。そのため、臨床試料を用いた分析実験へ研究を進める段階に至っていない。 ムチンコアタンパク質の同定は、抗体を用いて行なう計画であった。しかし、抗ムチン抗体のエピトープはムチン糖鎖まで含んでいるケースが多く、糖鎖の違いにより抗体で染まらなくなるケースも存在する。そのため研究計画では、ムチンの糖鎖をマイルドな条件で除去し、糖鎖がはがれたムチンタンデムリピートのペプチド部分を認識する特異抗体で染色することにより、ムチンコアタンパク質の同定を行なう手法の開発を行なってきた。ムチンの糖鎖を除去する条件は確かにマイルドだが、複数回の処理操作が必要であり、糖鎖除去の処理中にムチンそのものが膜からはがれてしまう可能性がある。また、本方法は用いる抗体の性能に依存する。タンデムリピートを特異的に認識する抗ムチンモノクローナル抗体には良い抗体が少なく、この点も本研究の進捗の遅れに影響した。 臨床試料を用いた実験は、膵液および胆汁中に含まれるムチンの電気泳動移動度、ムチンコアタンパク質、糖鎖、の3点を評価する予定である。現時点では、ムチンコアタンパク質の同定ができないため、臨床試料を用いた実験を行なう段階に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの本研究の成果により、分子マトリクス電気泳動法の物理化学的基礎については明確になってきた。ムチン検出の高感度化についてもコハク酸によるムチン糖鎖の化学修飾により達成できている。今後は、研究項目③分離能の高度化およびムチンコアタンパク質の同定法開発について重点的に研究開発を進める。 具体的には、等電点電気泳動やレクチン親和電気泳動への分子マトリクス電気泳動法の展開を進める。さらには複数の分離モードを組み合わせた2次元電気泳動も試みる。 ムチンコアタンパク質同定法の開発については、抗体を用いる方法に代わって、酵素もしくは物理化学的な手法によってムチンを分解し、得られた分解産物のプロファイリングにより同定する方法を試みる。まずはムチンそのものではなく、ムチンペプチドを用いて基礎的な分解条件や分離条件などの検討から開始する。
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Research Products
(7 results)