2011 Fiscal Year Annual Research Report
天然物類似低分子群の迅速合成・構造多様化と細胞機能制御
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23310156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大栗 博毅 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (80311546)
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Keywords | 構造多様性 / 迅速合成 / アルテミシニン / アルカロイド / ジヒドロピリジン / マラリア / 天然物 / 銅触媒 |
Research Abstract |
複雑で高度に官能化された天然物の構造を簡略化することなく"構造モチーフを多様化して系統的に合成する化学"の具現化と体系化を図る。高次構造低分子リガンドならではの細胞機能制御法の開発に取り組み、合成化学が先導するケミカルバイオロジーの基盤確立に貢献する。 アルテミシニン三環性骨格6位に窒素を導入した6-アザーアルテミシニン群を設計した。今年度は、(1)窒素の特性を利用した三成分連結反応、(2)メタラサイクル形成によるエンイン環化/ラジカル環化、(3)ビニルシランとオゾンの双極子付加と転位を伴うによるシリルペルオキシド導入を鍵工程とした6-アザーアルテミシニン群の合成を検討した。工程(2)(3)の改善と9位メチル基の導入が課題であるが、最近、9-デメチル-6-アザーアルテミシニンを全6工程で合成することに成功した。 生合成における構造多様性創出戦略を踏まえ、複数の天然型・非天然型アルカロイド骨格の多様性指向型合成を検討した。本年度は、共通の環化前駆体から骨格構築と次の世代の前駆体への分岐を並行して行い、これをn世代繰り返す分子進化型の合成プロセスを考案し、具現化した。トリプタミンより4工程で誘導したβ-アミノ酸を第一世代の共通中間体として設計し、官能基変換により導かれるジエンイン(第二世代)、ジヒドロピリン(第三世代)の多彩な反応性を活用する分岐型合成プロセスを計画した。窒素の保護基を必要としない骨格構築法を実現するため、銅触媒によるアルキン活性化を鍵とした多彩な環化反応を独自に開発した。二種類の天然型骨格(イボガ型・ヌゴウニエンシン型)と四種類の非天然型骨格を僅か5-6工程で構築した。更に、不斉補助基の導入により、イボガ型アルカロイド(-)-catharantineの不斉全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルテミシニン関連の合成では、低原子価金属による分子内環化の立体制御に成功した。また、ペルオキシドの導入と連続的なアセタール環化を進行させ、6位を窒素に置換したアザーアルテミシニン骨格の構築を実現した。また、多環性インドールアルカロイドの多様性指向型合成においても、エンインやジヒドロピリジン中間体から多彩な分子内環化反応の実現に成功し、すでに6種類以上の骨格の創出に成功した。さらに、ラセミ体の三環性中間体を環開裂させながら、不斉補助基を活用したエナンチオ制御骨格形成を実現し、天然物catharanthineの不斉全合成を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
各合成プロセスの最適化と適用範囲の拡大を図る。得られた3-5環性の天然物類似化合物群の生理活性評価に止まらず、これらを複合化した高次構造分子群を創製し、革新的な機能発現を目指す。
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Research Products
(6 results)