2012 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧種シマフクロウの遺伝的多様性評価と遺伝子資源保存の基盤形成
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23310164
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 千鶴子 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助手 (50106580)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 保全生物学 / 絶滅危惧種 / シマフクロウ / 遺伝的多様性 / マイクロサテライト / ミトコンドリアDNA / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(A)北海道における絶滅危惧種シマフクロウの保全をめざして、地域個体群の遺伝的多様性 を正しく評価すること、(B)細胞・遺伝子資源の保存体制を確立することである。 (A)のために、北海道大学に保管されているシマフクロウの培養細胞および血液および釧路市動物園等から提供された組織の追加サンプルからDNA抽出を行い、現在から過去にさかのぼって分析できる体制を整えた。昨年度開発した多型的DNAマーカーであるマイクロサテライト遺伝子を用いて、本年度の追加サンプルの遺伝子型分析を行った。これまで得られた全個体サンプルのデータを集計し、集団遺伝学的解析を行った結果、現在の北海道内における地域集団間で遺伝的分化が進んでいること、各地域集団において遺伝的多様性が低下していることが明らかとなった。生態学的調査により、地域集団間の少数個体の移動が報告されているが、そのような移入個体を受けた集団では、遺伝的多様性が増加している傾向が見られた。さらに、母系遺伝子であるミトコンドリアDNAをマーカーとして主な家系の集団を分析したところ、両性遺伝するマイクロサテライト分析と矛盾しない同様の結果が得られた。 一方、シマフクロウのミトコンドリアDNAコントロール領域内に特異的な反復配列を見出し、個体間の変異および種レベルの特徴を解明し、論文発表(Omote et al. 2013)することができた。 (B)については、(A)で述べたように現在入手できる現生サンプルのほとんどを分析したので、そのDNAも保存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づいて成果が得られている。さらに、シマフクロウのミトコンドリアDNAコントロール領域内に特異的な反復配列を偶然に見出し、個体間の変異および種レベルでの分子進化学的特徴を詳細に解明することができ、その成果を論文発表(Omote et al. 2013)した。
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Strategy for Future Research Activity |
北海道シマフクロウ集団の過去の状態を把握するため、今後は、古い時代の剥製や出土骨などの標本を収集し、古代DNA分析を進める。すでに予備的解析により、解析手法を開発した。その成果の集積により、シマフクロウ集団の時代的変遷が明らかになると考えられる。さらに、海外のシマフクロウ集団の分析を行う予定である。
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