2011 Fiscal Year Annual Research Report
野生イルカ個体群保全のための非侵襲的計測手法の開発
Project/Area Number |
23310166
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森阪 匡通 京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (00422923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 裕光 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 名誉教授 (20047377)
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Keywords | イルカ / 3次元形状復元 / 体長推定 / 肥満度 / 鳴音 / 音源音圧推定 |
Research Abstract |
沿岸域に棲息する野生イルカは、増加する人間活動との軋轢から大きな影響を受けている。餌生物減少や生息環境悪化などに伴う成長率の低下や栄養状態の悪化、また、沿岸域の人間活動による海中雑音の増加に伴うコミュニケーション範囲の減少、聴覚の損傷といった経時的な影響は重要にも関わらず、それらを計測する方法が確立されておらず、研究があまりなされてこなかった。本研究では、野生イルカの形態を非侵襲的に正確に3次元計測するシステムと、野生イルカの鳴音を非侵襲的に正確に記録するシステムを構築し、これを用いて個体数が近年激減している伊豆諸島御蔵島周辺海域の野生イルカ個体群の個体から基礎データを取得し、野生イルカの成長や肥満度、鳴音の詳細などを明らかにしながら、経時的変化をとらえることにより、個体群の保全につなげることを目的としている。 研究初年度である本年度は、採用決定時期より4か月間での研究となったことから、3次元モデルを構築する方法の確立に重点を置いて進めた。空気中で剛体の3次元モデルの構築に用いられているソフトウェアを購入し、その使用に習熟すると同時に、水中でイルカに照射する安全かつ十分な光量が得られるグリーンレーザーを選定した。御蔵島周辺海域で1mW以下のグリーンレーザーを簡易防水ケースに入れ5m先の海底に向かって照射したところ、光量は少ないものの反射光を確認できた。人間にも安全な1mW前後のグリーンレーザーで5m程度の距離から照射可能であると考えられた。 一方、イルカの各個体から正確に鳴音を取得するためのシステムに関しては、次年度の開発に向けて、4つの水中マイクの配置に関する音響シミュレーションを行い、最適なマイク配置、システム構成を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用決定から4か月間での研究であり、時間的余裕がなかったが、空気中での剛体の3次元モデルの構築に用いられているソフトウェアを購入し、その操作方法を習得できたことは次年度に向けた第一歩であった。調査海中においてレーザー光が適度に透過することも確かめ、複数のドットパターンを投影できるグリーンレーザーを発見したことも大きな進展であった。また、次年度製作する水中マイクアレーシステムの設計も終え、スムーズな設計が次年度に行えるように準備ができたことも重要である。したがって研究の目的の達成度はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
採用期間が短くなったため、本年度はスピードをあげて研究を進めていきたい。このために、本研究を遂行する補助員を時間雇用することにより、集中して研究の遂行に当たることができる。また、関西の複数の水族館において本研究の精度評価のための実験を行う手筈を整えており、時間的・空間的・費用的にも節約できる研究体制となる。また、近年ますます進んでいる簡便な剛体における3次元復元法を柔軟に用いながら、簡便かつ小型、安価なシステムづくりも目指していきたい。
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Research Products
(11 results)