2012 Fiscal Year Annual Research Report
野生イルカ個体群保全のための非侵襲的計測手法の開発
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23310166
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森阪 匡通 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (00422923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 裕光 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (20047377)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | イルカ / 3次元形状復元 / 体長推定 / 肥満度 / 鳴音 / 音源音圧推定 |
Research Abstract |
沿岸域に棲息する野生イルカは、増加する人間活動との軋轢から大きな影響を受けている。餌生物減少や生息環境悪化などに伴う成長率の低下や栄養状態の悪化、また、沿岸域の人間活動による海中雑音の増加に伴うコミュニケーション範囲の減少、聴覚の損傷といった経時的な影響は重要にも関わらず、それらを計測する方法が確立されておらず、研究があまりなされてこなかった。本研究では、野生イルカの形態を非侵襲的に正確に3次元計測するシステムと、野生イルカの鳴音を非侵襲的に正確に記録するシステムを構築し、これを用いて個体数が近年激減している伊豆諸島御蔵島周辺海域の野生イルカ個体群の個体から基礎データを取得し、野生イルカの成長や肥満度、鳴音の詳細などを明らかにしながら、経時的変化をとらえることにより、個体群の保全につなげることを目的としている。研究2年目となる本年度は、野生イルカの鳴音の非侵襲的な記録システムの構築と、3次元モデルを構築し精度を高める作業に重点を置いて進めた。鳴音記録システムは実際に野外での記録を行い、イルカの鳴音の音圧測定を行うことができた。しかしシステムが大きいため野外での取り回しが悪かった。これを今後改良する必要がある。一方、3次元モデルの構築に関して、現在のシステムを用いて空気中の模型に対して推定を行ったところ、体長および胴回りの誤差が最良値で約2%であり、野外での使用に耐えられる程度の誤差に収まっていた。今後水中模型、そしてイルカにこのシステムを用いた場合でもこの誤差以内となるように改良を加えていきたい。また、おおよその体長しか推定できないが、手法的に簡便な方法も並行して模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イルカの鳴音を正確に取得するシステムに関しては特に大幅な進展があり、現在システム自体の小型化など、すでに改善に向けて動いており、計画以上の進展であると言える。体長推定の方も精度が向上し、実現に耐えうる精度が得られている。またこのシステムのみならず、おおよその体長のみ推定できる、手法として簡易な方法も並行して模索している。したがって研究の目的の達成度はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
イルカの鳴音を正確に取得するシステムに関しては、現在システム自体の小型化を行っている最中であり、これを用いて、再度野生のイルカの鳴音をできる限りたくさん集めて、イルカの鳴音の正確なカタログ作りを目指す。一方体長及び胴回りの推定(3次元形状モデルの構築)の方は、昨年度同様、補助員を雇用し、集中して研究を行うことにより、さらなる精度向上と水中での使用、そして実際にイルカの撮影までこぎつける。また、おおよその体長だけしか推定できないが、手法として簡便な方法も並行して模索し、簡便性と正確性を兼ね備えた、または使い分けのできる、実践型のシステム作りを目指していきたい。その有効性の確認のために、学内プールでの実証実験を重ねた上で、実際にフィールドでの評価を行い、実用化を目指す。
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Research Products
(9 results)