2011 Fiscal Year Annual Research Report
外来および野生動物感染症のリスクプロファイリングとその対策に関する研究
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23310169
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
宇根 ユミ 麻布大学, 獣医学部, 教授 (40160303)
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Keywords | 生態系修復・整備 / 感染症 / 獣医学 / 病理学 / 動物 |
Research Abstract |
本研究では、外来および野生動物に流行する感染症および国内外の病原体のリスクプロファイリングを行い、その対策を確立し、我が国の生態系および生物多様性の保全を目的とする。国内で大量死する輸入動物、飼育下野生動物および野生在来種の感染症を解析するとともに、国際自然保護連IUCNや世界動物保健機関OIEなどがリストアップする国内未侵入の病原体とあわせて、多角的に分析、カテゴライズして、それぞれのリスクに対応した有効的かつ効率的な対策を確立する。平成23年度に実施・検討した内容は、両生類1)カエルツボカビ(Bd):国内のBd分布を的確に把握するためのモニター動物としてのウシガエル幼生の有用性を実証した(第152回日本獣医学会発表)。その結果を受けて自然界におけるBdの季節変動を調査し、越冬後の変態時期の1~2ヵ月前に保菌率が最も高くなることを明らかにした。また、オオサンショウウオなどの希少動物への非侵襲的なBd検出法として、免疫ビーズ法によるPCR検出系を確立した。併せて、オオサンショウウオを対象とした簡便で、効果的なBd除菌法を確立した (Dis.Aqua.Org.in press)。この検索途中に、オオサンショウウオ初の腫瘍を見出し公表した(J.Vet.Med.Sci,in press)。国内に流通するペット用外来両生類821匹のBd保菌率とハプロタイプを明らかにした(第153回日本獣医学会発表)。2)ラナウイルス:飼育下事例では、絶滅危惧種であるハクバサンショウウオと輸入中国産イボイモリでの全滅・流行事例を見出した。野生下では、新たに、発生時期あるいは臨床症状の異なるウシガエル幼生の大量死事例を2ヵ所で確認した。これらの検索により、国内未確認のラナウイルス(FV3,新規ウイルス)を検出した。また、先に分離したラナウイルスRCV-JPとHNVの在来種への高病原性を感染実験で証明した(29回ESVP学会発表)。全国両生類大量死事例の遡及的研究を行った結果、大量死の原因としてラナウイルスが重要で、次に捕食、気候変動によるものが多いことを明らかにした(第152回日本獣医学会発表)。3)皮膚メタセルカリア症:東北大震災の影響で、継続観察地であった福島県内での調査が困難となったため、他県で発見された類似症状を示す動物を検索していたところ、福井県のアベサンショウウオ(天然記念物)をはじめとして、高知県、茨城県の小型サンショウウオで本疾患を見出した。哺乳類1)破傷風:飼育下ニホンザルにおける破傷風集団発生を見出し、その機序を明らかにして対策をとった(獣畜新報)。2)Streptococcus gallinaceus:輸入フクロモモンガの顔面腫脹を主徴とする流行事例を解析して、ヒト以外の哺乳類で初めてSgの敗血症事例を見出した(第152回日本獣医学会発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
両生類の感染症に関しては、有用なカエルツボカビのモニター動物が得られたことから、当初の計画より早期に、様々な研究アプローチ(季節変動、国内分布、ハプロタイプ解析など)が可能となった。また、材料・情報提供(収集)のネットワークが十分に機能し、新たなラナウイルスが2系統も見出されたことから、先に樹立したウイルスとの比較検討が容易となり、詳細なウイルス学的研究が可能となった。さらに、哺乳類において新たな流行疾患も検索することができ、リスクプロファイルの結果、有効な対策が立てられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)カエルツボカビ(Bd):Bdの起源を解明するため、越冬ウシガエル幼生を対象として全国からサンプリングを行い、Bdの分布、採取地点のBd陽性率とハプロタイプ解析を実施する(平成24年4月時点で21都府県からの採取を完了している)。免疫ビーズ法による微生物濃縮をおこないBd各種ハプロタイプの培養株の樹立を試み、その病原性を検討する。2)ラナウイルス:国内分布を明らかにするための有用なモニター動物を検討する(ラナウイルス感染症流行事例の解析から、候補動物の選定を終えている)。そして、本感染症における大量死の発生機序を探索する。23年度に新規に確認したウイルスの在来種への病原性を検討する。1)、2)の成果に基づき各病原体の在来種へのリスク評価を行い、対策を立案する。その他、哺乳類の流行病に関しても解析を続け、対策を検討する。
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Research Products
(19 results)