2011 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅のおそれのあるツキノワグマ孤立個体群におけるMHC遺伝子の多様性評価
Project/Area Number |
23310170
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
石橋 靖幸 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, チーム長 (80353580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 徹 独立行政法人森林総合研究所, 野生動物研究領域, 室長 (10201964)
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Keywords | ツキノワグマ / 孤立個体群 / MHC / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
本研究は、孤立状態にあると考えられている西中国、および東中国山地のツキノワグマ個体群において、免疫機構の一つである主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の多様性を評価することが目的である。西日本各地で捕獲された個体の組織標本(筋肉、肝臓、あるいは血液)を集める体制を整えることと、MHCクラスIIタンパク質分子の中で特に多様であることが重要とされる部分をコードしているゲノム領域(ベータ遺伝子エクソン2)の塩基配列を解読する方法を確立することを目的に研究を実施し、以下のような成果を得た。 1.広島、島根、鳥取、京都、福井、石川、富山の各府県に協力者を得て、有害駆除等で捕獲されたツキノワグマの組織標本を集める体制を整えた。 2.広島、島根、鳥取、京都、富山から、それぞれ14個体、81個体(2009と2010年度分の72個体を含む)、6個体、4個体、1個体の標本を得た。 3.先行研究を参考にMHCクラスIIベータ遺伝子エクソン2の塩基配列(270塩基対)を解読する方法を確立した。 4.多様性を比較するため、機能を持たないイントロン領域の配列を2種類選び(ベータフィブリノーゲン遺伝子イントロン7とトランスサイレチン遺伝子イントロン1)、PCR法を用いてそれらの配列を決定するためのプライマーを作成した。 5.広島県で2002年に捕獲された14個体について、ベータ遺伝子エクソン2領域の塩基配列を解読したところ、ヘテロ接合は3個体のみで、わずか2種類の対立遺伝子しか確認されなかった。多様性が著しく低くいことから、西中国個体群では、この遺伝子の多様性が失われている可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MHCと多様性を比較するため、機能を持たないゲノム領域の塩基配列を解読する手法を確立し、分析を始める予定であった。2種類のイントロン領域を選定し、それらの塩基配列の決定に用いるプライマーを作成するところまで進めることができたが、実際に標本の塩基配列の解読を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度中に達成できなかった2種類のイントロン領域の塩基配列の解読法をできるだけ早期に確立する必要がある。だが、それについては先行研究があるため、特に問題は生じないものと考えている。分析手法の確立後は、これまでに得ている標本について、MHC遺伝子とともに予定どおり分析を進める。
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Research Products
(1 results)