2011 Fiscal Year Annual Research Report
近現代インドにおける食文化とアイデンティティに関する複合的研究
Project/Area Number |
23310174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井坂 理穂 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (70272490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 聡 大阪大学, 世界言語研究センター, 教授 (80283836)
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Keywords | インド / 食文化 / アイデンティティ / 近現代 / ネーション / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
2011年度は、近現代インドにおける食文化の変化についての概要や、研究動向をおさえると同時に、各メンバー(井坂理穂、山根聡、篠田隆、小磯千尋)がそれぞれの具体的な研究テーマについて資料収集・分析を進めた。メンバーのうちの2名(山根、小磯)はインド、パキスタンに出張し、資料収集を行った。また、3回にわたり研究会を開催し、メンバー以外の参加者も交えて討論を重ねた。第1回研究会(6月)では、小磯、井坂がそれぞれ、インド食文化についての概説と研究動向について報告した。第2回研究会(11月)では、小磯がインド都市部のミドル・クラスにおける健康意識の高まりと、それに伴う食生活の変化を論じた。また、山根が南アジア・ムスリムの宗教的アイデンティティの再構築過程を、食文化に関するウルドゥー語文献から考察した。ここでは植民地期において、イギリス人という「新たな他者」との接触や、ムスリムの近代化、イスラーム復興をめざす動きのなかで、「食」をめぐり活発な議論が展開されたことが示された。第3回研究会(2012年2月)では、篠田が統計資料を用いながら、現代インドにおける食料消費の動向について、地域差や宗教、社会集団ごとの特質を論じた。また、研究脇力者である長谷川まゆ帆が、比較の観点から、西洋史における食文化研究の動向、18世紀フランス社会と食文化についての事例を紹介した。以上のような研究活動を通じて、近現代インドにおいて、「あるべき」食文化をめぐる認識がどのように変化したのかについての具体像が明らかになるとともに、様々な社会集団におけるアイデンティティ形成と食文化との関係が、いかに流動的かつ多様性をもつものであるのかが、複数の地域や時代の事例にもとづき実証的に示された。さらに2011年度末には、成果公開のために本プロジェクトのウェブサイトを作成した(現在メンバーのみが閲覧可能、6月に一般公開予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各メンバーによる研究はいずれも順調に進展しており、3回にわたる研究会を通じてそれらの成果が報告され、充実した議論が展開された。海外出張を通じての資料収集や、現地の研究者との交流も進展している。2011年度の研究活動の成果をもとに、2012年度は学会報告や論文執筆などのかたちで、より積極的に成果を公表していく予定である。ウェブサイトの作成も着実に進んでおり、2012年6月には一般に公開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
定期的に研究会を開催するほか、学会報告や論文執筆などを通じて、研究成果を発表する機会を積極的に設ける。また、インドにおける現地研究者を交えての研究会や、最終年度に予定している国際ワークショップの開催に向けての準備を行う。現地での資料収集、画像収集の作業をさらに進め、学術的な研究成果としてまとめる一方で、より広範な人々の関心に沿うかたちで、ウェブサイトや学術雑誌以外の出版物、授業や講演会などを通じて、研究成果をわかりやすく伝えることを試みる。
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Research Products
(6 results)