2012 Fiscal Year Annual Research Report
近現代インドにおける食文化とアイデンティティに関する複合的研究
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23310174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井坂 理穂 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70272490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 聡 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (80283836)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インド / 食文化 / アイデンティティ / 近現代 / ネーション / 都市 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
2012年度は、各メンバーがそれぞれの具体的な研究テーマについて資料収集・分析を進めるとともに、日本南アジア学会でのセッション企画(2012年10月6日)その他を通じて成果を広く公開した。 まず、日本南アジア学会で組織したセッション「近現代インドにおける食文化とアイデンティティ」では、篠田隆(連携研究者)がこれまで行ってきた統計分析をもとにインドにおける食料消費の動向と地域性について報告し、山根聡(研究分担者)が19世紀半ばから20世紀半ばのウルドゥー語文献における食文化関連の記述を紹介しながら、洗練された語彙の使用や、そこに表される都市への郷愁について明らかにした。また、小磯千尋(研究協力者)は現代インド都市中間層の食文化の変容を、外食や飲酒に焦点をあてながら論じ、井坂理穂(研究代表者)は植民地期インドにおけるイギリス人家庭と料理人との関係や、そこで生まれた諸慣習がインド人ミドル・クラス家庭に与えた影響を検討した。 このほかに、本プロジェクト主催の研究会を2012年6月および2013年2月に行った。ここではメンバー以外の研究者を招き、インド以外の地域の事例や、インド中世の食文化に関する研究についての報告を聞くとともに、近現代インドの事例と比較しながら、横断的、通時的なつながりや相互の相違について議論した。 海外出張については、2013年2月に長谷川まゆ帆(研究協力者)がインドを訪問し、旧フランス領ポンディシェリを中心に、フランス料理が在地の食文化に与えた影響に関して資料収集を行った。同年3月には篠田がインドの複数の都市(コルカタ、チェンナイ、ゴア、アフマダーバード)を回り、外食産業に関する資料収集や聞き取り調査を行った。 このほかに、本プロジェクトのウェブサイトを作成・更新し、研究会情報、基本的な文献の紹介、現代インドの食に関するエッセーなどを掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各メンバーによる研究はいずれも順調に進展しており、学会での報告、そこでの質疑応答を踏まえて、その後さらに分析手法や資料を再検討し、議論を進展させつつある。また、本プロジェクト主催の研究会を通じて、メンバー間での情報・意見交換や、他の地域・時代の食文化史を研究する研究者との学術交流が進んでおり、より広範な視点や問題意識が生まれつつある。2013年度はこうした成果をさらに海外へ発信したり、論文などの出版物を通じて公表することに力を入れたいと考えている。また、海外出張を通じての資料収集や、現地の研究者との交流も進展しており、これを次年度以降、国際会議への参加や国際ワークショップの組織へとつなげたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様に定期的に研究会を開催するほか、雑誌への投稿や論文集の刊行などを通じて、研究成果を発表する機会を積極的に設ける。また、関連するテーマを扱っている研究者とのネットワークをさらに広げ、活発な意見・情報交換を継続的に行う。海外に向けて成果を発信することにも努め、国際会議に参加し、そこで研究報告を行ったり、インドにおいて現地の研究者を交えた研究会を組織することを検討する。さらに、最終年度に予定している国際ワークショップの開催に向けて、海外の研究者と協議しながら準備を行う。 以上のように学術的な場で研究成果を公表することを進める一方で、現地調査で収集した資料や画像をもとに、より広範な人々の関心に沿うかたちで成果を伝えることを試みる。具体的には、授業や講演会のなかで研究内容を紹介するほか、ウェブサイトをさらに充実させ、学術雑誌以外の出版物を通じても情報を発信することを予定している。
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Research Products
(9 results)