2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23310190
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Research Institution | Osaka Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 千香子 大阪学院大学, 国際学部, 准教授 (40290233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 彰洋 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40356267)
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 古環境 / メソポタミア / 粘土板 / 塩害 / 珪藻 / 砂漠化 / 国際研究者交流 / イラク:イギリス |
Research Abstract |
本研究の目的である「塩害・砂漠化の視点から構築するイラクの環境史」に沿って、古環境復元のため、主な海外調査を4回行なった。うち2回は、ウィーン大学と共同で行なう文献調査で、初期王朝時代の文献資料に記録された塩害とその対策について検討した(8月・3月)。シュメール語の専門用語について議論を重ね、その意味するところを明らかにする試みを行なった。 粘土板分析では、エール大学において、粘土板の化学分析調査を行なった(9月)。今までに調査を行なっていない地域および年代の粘土板約240個に対して携帯型蛍光X線分析装置および帯磁率計による測定を行なった。粘土板に用いられた土の違いに関して、ティグリス、ユーフラテス河の流域による違い、あるいは、上流、下流の違いがその原因として考えられていたが、今年度の調査からはこのことに対して明確な答えを出すことができなかった。これに加え、粘土板表面のマンガン酸化バクテリアによると思われる黒色物質の調査を行なった。 生物指標調査では、前年度に大英博物館で採取したサンプルの処理及び検鏡を行ない、最終報告書の提出、ならびにサンプル返還のため大英博物館を訪問した。また、現在イラクに生息する珪藻の調査を行なうため、サンプル採取に向けた打ち合せを行なった(3月)。考古調査では、ティグリス川上流域の遺跡から出土した動物骨の調査をおこなった。 現代塩害の研究では、Asterの衛星画像を購入し、海外共同研究者のアルタウィール氏が解析を担当し、これに基づいて、共著論文を執筆し学術誌に投稿、受理された。この他、研究会を年2回開催し(6月・12月)、研究活動の内容については、ニュースレター第3号を発行した他、ホームページを開設して広報に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘土板分析については、ほぼ当初の計画に沿って調査を実施することができた。特に、エール大学調査では、分析対象とする粘土板の見直しをしたため、さらに精確なデータを収集することができ、メソポタミア南部全域をほぼカバーするデータ・ベースが構築された。一方、大英博物館の粘土板に対する化学分析調査について、前年度末に調査申請をしたにもかかわらず、博物館側からの回答が遅延し、調査が翌年度に持ち越されることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行なった調査で蓄積されたデータに基づき、経過報告とその公表を促進する。また少なくとも研究期間内に成果を論文にまとめて、学術誌に投稿することを徹底する必要がある。難航している分析については、その方法論を含めて再検討する。 次年度は、文献研究(ウィーン大学)ならびに粘土板化学分析(大英博物館:調査許可待ち)について、それぞれ海外調査を行なう予定である。秋にイラク・クルド自治区から研究者を招聘し、東京と京都にて国際シンポジウムを開催する計画を立てている。
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Research Products
(7 results)