2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320009
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
水上 雅晴 琉球大学, 教育学部, 准教授 (60261260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 浩之 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60322773)
石井 行雄 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60241402)
佐野 比呂己 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60455699)
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Keywords | 校勘 / 経典 / 博士家 / 江戸の学術 / 仏典 / 国書 |
Research Abstract |
本研究計画は、中国の清代および日本の江戸時代において確立した校勘学について、相互の影響を視野に入れつつ、発展の状況と影響を多角的に解明することを主要な目的とする。研究計画書に記した通り、日本における校勘学発展の流れを跡づける試みはなされていないに等しいので、研究代表者は論文「日本における文献考証とその発展に関する試論-儒学文献の校勘を中心に-」と「清原家《論語抄》中的経説-以清原宣賢《論語聴塵》為線索」にて関連する考察を行なった。論文の中では、国内では奈良時代の写経所で始まった校勘が、次第に仏典から儒書へ、さらには『万葉集』や『源氏物語』などの国書に対してもなされるようになっていく状況と、それぞれの範躊に属する作品が複数のテキストを持つようになった時に見られる校勘の手法と内容の相違点について跡づけた。その上で、校勘という営みが持つ学術上の価値が江戸時代に高まり、中国の学界にも影響を及ぼす成果がそこから生まれたことを論じた。研究分担者の一人は「『古今和歌集』語彙複合から見た『源氏物語』の『さ・こそ・あり』(『源氏物語大成』四九一頁十一行目私釈)」の中で、『源氏』テキストを校訂・解釈する上で『古今集』の影響を考慮に入れる必要があることを提起した。『古今集』の語彙・語句は、一条帝の時代まで文人たちにとってまだ自家薬籠中のものと言えた。この時代に書かれた『源氏』のテキストは、『古今集』に対する素養が低下した後の文人たちが書写を繰り返すことで変容しており、テキストを解釈・校訂するにはこのことを踏まえる必要がある、という薪たな論点を提示した。歌道の「経典」と位置付けられることもある『源氏』に対するこれまでの校勘手法の不備を指摘した本論点を理解するには、「『古今和歌集』語彙から見た『源氏物語』の『あさまし』(『源氏物語大成』一七四頁五行目私釈)」も併せ読む必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から研究計画に関連する論文二篇を海外で発表し、論文二篇を公刊できた。次年度以降も同様のペースで研究発表ができると予測されるので、おおむね順調に進展していると見ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
仏典の校勘に関する研究体制を補強するため、次年度から研究分担者の増員を考えている。
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Research Products
(4 results)