2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
水上 雅晴 琉球大学, 教育学部, 准教授 (60261260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 行雄 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60241402)
近藤 浩之 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60322773)
佐野 比呂己 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60455699)
江尻 徹誠 北海道大学, 文学研究科, その他 (80528232)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | 校勘 / 経典 / 博士家 / 江戸の学術 / 仏典 / 年号勘文 / 琉球 |
Research Abstract |
本年度は、主として以下の4つの事業を実施した。 (1)中国清代の校勘状況の考察:北京大学客員研究員として国家図書館所蔵にて顧広圻の校語を含む『經典釈文』校本二種を調査。既に上海で調査済みのも含めた『釈文』校本中の校語と顧氏が分校者として担当したと思われる『毛詩釈文校勘記』中の校語とを比べてみると、内容が基本的に一致する。この事実は、『十三経注疏校勘記』の分校者が実際に『校勘記』の校語を書いたことを示す直接的な証拠になり得る。考察の成果を北京大学での招待講演会にて報告した後、論文を北京大学国際漢学家研修基地発行の学術雑誌に寄稿し掲載された。さらに、清初の経学書の校勘状況についても考察を加え関連論文を刊行した。 (2)日本中世・近世の校勘状況の考察:清原家『尚書』点本に見える「本(古本)」の文字が隷古定『尚書』につながる貴重な校勘資料であることを長沙で開催の国際会議において報告。提出した完成稿は後日、論文集に掲載される予定。/江戸時代における『論語』の校勘を代表する吉田篁トン『論語集解攷異』における校勘の方法と内容ついて考察を加えた。その結果、対校資料として使われているものの多くが孫引きであり、とりわけ仏典音義書からの引用が多いこと、所引の佚書の文字が直接資料を使ったものではないことが明らかになった。本考察の内容は上海で開催の国際会議にて報告し、提出した完成稿は後日、学術雑誌に掲載される予定。 (3)年号勘文資料の調査:年号勘文資料所引漢籍については、所功などが調査を加えているが、所引の漢籍の文字が持つ校勘上の価値については論じられていない。この方面に関する調査を進め、次年度、研究発表を行なう予定。 (4)琉球における経書学習と校勘状況の調査と考察:琉球時代の漢籍に対する書き入れをもとに、経典の学習と校勘の状況について調査した。その成果の一部を一般向け啓蒙書の中で披露した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において設定した各項目を構成する事業内容に関わる論考を国内外の学術会議において発表しており、その多くが学術雑誌に掲載済みもしくは掲載予定となっている点にかんがみると、研究計画はおおむね順調に進展していると見ることができる。ただし、予定通りに実施できていない項目や実施されていても研究を深める余地が大いにある項目もあるので、残りの期間における事業内容を次項に記す通り部分的に修正する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
清代における校勘学の進展や日中校勘学の関連という大きなテーマは、一人や二人による研究では十分な成果を挙げ難い。研究計画期間内に確実に研究成果を挙げるために、当初、最終年度に予定していた国際学術シンポジウムを次年度に前倒しして実施することにする。関連分野に携わっている国外の研究者十五名程度、国内の研究者十名程度を招聘する。既に多くの参加予定者から発表題目が届いていて、清代の校勘学に関する論考が多く発表される見込みであり、研究計画の柱の一つを構成する項目に関わる研究の進展が期待される。 国内に大量に収蔵されている年号勘文資料は、分析のために必要な画像データの入手に関しては確実に進展しているが、入手できていないデータが依然として多く、当初予定されていた解題目録の完成は難しい状況にある。そこで、年号勘文資料に引かれている漢籍、とりわけ儒家経典に関わるものについて、それぞれが書写された時期や通行テキストとの文字の異同を調査し、古代・中世における経伝テキストの流通状況を調べるための校勘資料集として発表するように事業内容を調整しようと考えている。
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Research Products
(7 results)