2012 Fiscal Year Annual Research Report
チベット仏教教学の形成過程-カシミールを中心とする周辺地域との交流の視点から-
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23320011
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉水 千鶴子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10361297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 基 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00272120)
武内 紹人 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10171612)
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インド後期仏教 / チベット仏教 / カシミール / カダム派 / 中央アジア / 僧院仏教 / 仏典翻訳 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は以下の6点である。 1) シャン・タンサクパ著『中観明句論註釈』写本の校訂テキスト第1分冊を東洋文庫より刊行した(吉水)。これは唯一完全な『明句論』の註釈書であり、『明句論』の理解とチベットにおける伝承を知る上できわめて有意義な成果である。 2) ハンブルク大学におけるシンポジウムにおいてカダム派による『明句論』の伝承方法について報告した(吉水)。『明句論』翻訳者から直接チベット人の弟子にテキスト解釈を伝える様子を再現することができた点は大きな成果である。 3) 仏教論理学の基礎である認識根拠の概念について論文を発表した(小野) 4) 平成24年10月21日、シンポジウムを本学で開催し、内外の研究者を招聘して講演と討論を行った(講演者に武内、船山を含む)。中央アジア出土資料、漢語資料、サンスクリット語資料、チベット語資料を駆使した多角的な研究成果が発表され、当時のカシミール、チベット周辺地域の文化交流の実態に迫る有益な議論を行うことができた。 5) カシミールに関する資料収集し、『カシミール王統史』から10~12世紀に関する記事、人名、地名等を集めたデータベース作成を継続して行った(吉水、岡田)。6) 平成25年度に繰り越した研究費による実績は、平成25年9月に本学で開催したワークショップに内外の研究者の参加を得て、 Jinendrabuddhi, Pramanasamuccayatika 第6章を講読、翻訳を作成、内容を検討したことである。インド論理学における討論の形式を解明し、チベットの論理学へと発展する過程について考察を加えた。この研究成果を発表すべく、資料整理、翻訳のチェックを行い、25年度科学研究費補助金による研究へ引き継いだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(理由)『中観明句論註釈』の校訂テキスト第1分冊を刊行できた。 10月の本学でのシンポジウムで発表された研究成果は、新しい知見を多く提供するものであった。 『カシミール王統史』のすべての章からデータベースの項目を抽出することができた。 課題であったpramanasamuccayatikaの講読を大幅に進め、25年度に完成できる見通しまで進めることができた。この作業に多くの研究者の協力を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
『中観明句論註釈』校訂テキスト第2分冊を準備し、平成27年度の刊行を目指す。 平成25年度はライプチヒで開催されるカシミールの宗教思想をテーマとしたシンポジウム、ならびに成都で開催されるチベット学国際会議に参加し、成果発表と情報・意見交換を行う。 これらの成果を統合した論文集の作成を目指す。 研究計画の変更はとくに行わない。
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Research Products
(13 results)