2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヴァールブルク美学・文化科学の可能性--批判的継承から新たな創造へ
Project/Area Number |
23320028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
伊藤 博明 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70184679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 哲弘 関西学院大学, 文学部, 教授 (60152724)
田中 純 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10251331)
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Keywords | アビ・ヴァールブルク / ムネモシュネ・アトラス / パトスフォルメル / クラスター分析 / イコノロジー / 占星術 / フランツ・ボル / ペルセウス |
Research Abstract |
(1)古典古代の浮彫りや陶器画に見られる物語表現について、ヴァールブルクも参照した考古学者ローベルトによる調査研究を検討して論文として発表するとともに、『ムネモシュネ・アトラス』にも写真が掲載されている、スウェーデンの画家ラーションによる国立美術館壁画における北欧神話の表現について現地調査を行った。また、晩年のヴァールブルクが取り組んでいた「美学」ないしは「感性論」についての研究は基礎的な調査を終え、次年度も継続して遂行する。 (2)『ムネモシュネ・アトラス』における「パトスフォルメル」の諸相を「ニンフ」「河神」「頭を手でつかむ身振り」「狂乱の母」「女性の略奪」といった主題別に整理して、それぞれの指標となる要素を個々のパネルが含むか否かという規準によって分類を試みた。その際、統計学的なクラスター分析の手法を用いることにより、『ムネモシュネ・アトラス』をいくつかのクラスターに分割し、その関係性を考察することを通じて、『ムネモシュネ・アトラス』全体の重層的な構造分析を達成した。この過程で「女性の略奪」という「パトスフォルメル」の主題の背景にある政治的・社会的コンテクストがジョルジュ・デュメジルの比較神話学の知見に関連することを発見し、『ムネモシュネ・アトラス』と神話学とを融合したイコノロジー的な文化構造論への展望を得た。 (3)『ムネモシュネ・アトラス』における占星術的なモティーフについて、フランツ・ボル追悼講演や、ハンブルクのプラネタリウムのためにヴァールブルクが作成した図像アトラスとの照合や比較を行いながら、総体的な把握のための作業を行った。また、晩年における「ペルセウス」のイメージもつ思想的な課題についても考究した。 (4)『ムネモシュネ・アトラス』邦語版作成のための協同作業を行い、平成23年度内に刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、『ムネモシュネ・アトラス』の全パネルの解説を含んだ邦語版は、平成24年度に刊行する予定であったが、集中的に協同作業を行った結果、平成23年度に刊行することができた。それとともに、研究代表者・研究分担者の研究課題についても、おおむね順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
『ムネモシュネ・アトラス』の刊行を記念して、シンポジウム「アビ・ヴァールブルクの宇宙-『ムネモシュネ・アトラス』をめぐって」を開催し、研究成果の一部を公開するとともに、各方面からの批判を仰いで、今後の研究を発展させたい。 『ムネモシュネ・アトラス』における「パトスフォルメル」の諸相について精緻に整理して、さまざまな主題を指標とするパネルの分類をいっそう厳密に行うことにより、クラスター分析に手法によるパネル分類の精度を高め、最終ヴァージョン63枚のパネルについての構造分析を深化させる。 『ムネモシュネ・アトラス』のパネル34に見られる「動的生」を基点にに全パネルとその成立過程を見直すことによって、「世俗世界のイコノロジー」という問題圏への接近を試みる。
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Research Products
(14 results)