2012 Fiscal Year Annual Research Report
南宋絵画史における仏画の位相―都と地域、中国と周縁―
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23320033
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井手 誠之輔 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (30168330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 聖哲 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00242074)
塚本 麿充 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 学芸研究部研究員 (00416265)
谷口 耕生 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 学芸部保存修理指導室長 (80343002)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 南宋仏画 / 寧波 / 儀礼 / 杭州 / 絵画表象 / 北宋 / 南宋 / 江南仏教 |
Research Abstract |
1、ワークショップの開催 今年度は、国外の研究協力者であるユキオ・リピット氏(ハーバード大学)を迎え、2部構成でワークショップを開催した。第一部は「南宋仏画とその周縁」と題し、佐賀県立美術館における鏡神社所蔵の水月観音像の特別陳列にあわせ、宋代絵画の朝鮮における受容やイコンとしての機能について協議した。井手、リピットの他、西洋の宗教美術を専門とする京谷啓徳(九州大学)を交え、宋代絵画の規範性と周辺地域での受容について、東西との比較をふくめて協議できたことは大きな収穫となった(佐賀県立美術館:2012年2月25日、26日)。第二部は、南宋仏画の意味と機能をその絵画表象から考えることを目的とし、「南宋仏画と儀礼」と題して、宋代に確立した儀礼との関係を中心に井手と谷口が発表を行い、参加者で協議した(九州大学文学部:2013年2月27日)。 2、国際的な場における研究成果の公表 積極的に国際シンポジウム等に参加し、井手は、フロリダ大学ハーン美術館で開催された韓国美術のシンポジウム(2012年12月1日)と大塚国際美術館で開催された国際美術史学会(2013年1月16日)で、唐絵として受容された南宋仏画や高麗仏画の意義について発表したほか、塚本は、河南大学の宋代史シンポジウム(2012年8月12日)、香港芸術館での中国絵画講座(2012年12月16日)で、南宋仏画の前史となる北宋宮廷における江南仏教美術の受容について発表した。 3、個々の研究分担者の調査研究 井手が、寧波の石材で造られた薩摩塔や石塔の調査を行ったほか、呉越国以来の杭州における仏教文化の伝統(谷口)、北宋の都開封における呉越文化の受容と南宋の杭州におけるその展開(塚本)、南宋杭州における宮廷と禅宗絵画(板倉)について継続的に調査研究をすすめ、一部を、研究論文として公にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、南宋仏画の位相を定置しうる南宋絵画史の枠組みを再構築するための概念モデルを構築すべく、国内外でのワークショップを継続的に開催することを課しているが、今年度においては、国外でのワークショップの開催を実現できなかったことが、大きな反省課題となる。しかしながら、その分を補う形で、井手と塚本が積極的に国内外で開催された国際シンポジウムに参加し、関連発表を行うことができたことを多としたい。 また国内でのワークショップの開催が、主として研究代表者の九州大学で行われていることが多く、それ以外の場での開催が十分ではないことも、反省すべき課題となっている。この点については、研究分担者とのスケジュール調整を早い段階で行うことができなかったのが理由である。次年度には、東京または関西でのワークショップを実現し、より広範な研究者との議論の場を設定し、研究内容の評価を高める努力を行っていくことにしたい。 個々の研究分担者が行っている研究については、それぞれ順調な進展がみられる。それらを統合し、また対立する軸を設定して、より徹底した議論を行う機会を設けるようにつとめる必要性があると感じている。 これらの現況から、現段階での達成度は、七割を越える程度に進展しているものと考えている。最終年度に不足を補い、より総合的な観点から、研究をまとめる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究の最終年度となる。研究目的とする南宋仏画の位相を正しく把握するための概念モデルを構築し、その有効性を高めるためには、事前により多くの研究者との協議が必要と考えられ、これまでのワークショップで行ってきた議論をいわばたたき台として鍛錬すべく、関連する研究者が多い、関西あるいは東京でのワークショップを実現するよう努力する。 また、本研究の観点は、これまでさほど議論されることのなかった中国絵画史の言説空間におけるさまざまな制度を見直すことにも繋げていかねばならない。この点については、中国絵画史全般について広範な視点から見識をもつ石守謙氏(台湾、中央研究院)を招聘し、南宋仏画の位相をめぐる議論が如何なる点において中国絵画史研究に新しい視座をもたらしうるのか、研究分担者とともに徹底した議論を行いたいと考えている。 近代に誕生した美術史学の言説空間に対する制度論的立場からの批判は、1990年代より日本の美術史学において大きな議論が巻き起こってきた問題であり、研究代表者も日本美術史の受容の問題として、積極的に日本に伝来してきた南宋仏画の問題をとりあげてきた。できれば最終年度の課題として、本研究を端緒として、現行の中国絵画史の言説空間そのものの有効性を再検証する議論と、日本における受容の議論の問題とを緊密にむすびつけ、一国の美術史学の制度を越えて、東アジア絵画史全般を再検討しうる議論にまで高めていくことを期したい。
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[Presentation] 南都仏画と天平復古2012
Author(s)
谷口耕生
Organizer
奈良国立博物館 夏季講座「鎌倉時代の南都仏教」
Place of Presentation
奈良県新公会堂能楽ホール
Year and Date
20120820-20120820
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