2011 Fiscal Year Annual Research Report
古代ローマの彫刻コピー工房の研究――3次元ディジタルデータの取得と応用
Project/Area Number |
23320040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芳賀 京子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (80421840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 岳史 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80569509)
小野 晋太郎 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (80526799)
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Keywords | 芸術諸学 / 美術史 / ギリシア美術 / ローマ美術 / 3次元ディジタル形状比較 |
Research Abstract |
古代ギリシアの彫刻家の手になる名作からは、ローマ時代にいくつものコピーがつくられた。現在では名作のオリジナルはそのほとんどが失われ、コピーのみが大量に残されている。その大部分はフリーハンドのコピーではなく、何らかの器具を使っての「機械的コピー」とよばれるものだが、その制作の実態についてはいまだ明らかにされていない。 本研究は、同一のギリシアのオリジナルに基づく質の高いローマのコピーを3次元ディジタル計測し、形状比較を行うことで、古代ローマの彫刻工房の制作の実態を解明することを目的とする。そのために、平成23年11月にミュンヘンのグリプトテークにおいて、彫刻家プラクシテレスの《休息するサテュロス》のローマ時代のコピー3点をはじめ、ポリュクレイトス作《鉢巻きをする人》のコピーなどを3次元ディジタル計測した。また、精度は劣るものの、より多くのサンプルからの3次元データを入手するために、近現代に古代の大理石像から取られた石膏像を大量に所蔵するミュンヘン石膏博物館を利用し、ここでポリュクレイトスの《槍を持つ人》(古代の大理石像はミネアポリス美術研究所)、《鉢巻きする人》(同、アテネ国立博物館)などの3次元データを取得した。現在、解析を進行中である。 しかし、より客観的なコンピュータによる形状比較の手法を開発するためには、同じタイプに由来するローマン・コピーのサンプルを大量に取得計することが必要であることが判明したため、平成24年10月にミュンヘン石膏博物館で、新たに20体の《アウグストゥス肖像》の頭部を3次元ディジタル計測し、解析を進めた。 同時に、平成24年度の調査研究として、ローマ時代のコピー制作とともに紀元前5世紀のブロンズ像制作の実態の解明をも視野に入れて、ナポリ国立考古学博物館でポリュクレイトスの《槍を持つ人》の複数のローマ時代のコピーの3次元計測をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたミュンヘン、グリプトテークおよび石膏博物館における彫像の3次元計測調査は、平成23年11月に実施することができた。だが形状比較をさらに客観的なものにするためには、同じタイプの彫像を数多く計測することが必要であることが判明した。そこで平成23年度の経費を12ヶ月間繰越し、平成24年10月に石膏博物館で《アウグストゥス肖像》の頭部20体を新たに3次元計測した。計測の人員を増やし、平成24年度末までの計測予定は済ますことができたが、計測データが格段に増えたため、その解析にも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたよりも計測調査した作品数が増えたために、解析にも格段に長い時間を要することになった。そこで次年度には、謝金なども使って解析作業に注力することにする。時間がかかってはいるが、より精密な形状比較の手法を開発することにより、一層客観的で有益な結果が得られることが期待される。明らかになった成果は次年度から積極的に公表していくこととする。
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