2013 Fiscal Year Annual Research Report
古代ローマの彫刻コピー工房の研究――3次元ディジタルデータの取得と応用
Project/Area Number |
23320040
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芳賀 京子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (80421840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 岳史 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80569509)
小野 晋太郎 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80526799)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 芸術諸学 / 美術史 / ギリシア彫刻 / ローマ美術 / 3次元ディジタル形状比較 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度までの研究でローマン・コピーの精度の高さが非常に高く、頭部や手足などでは誤差が2mm以下のこともあることが判明した。そこでその成果に基づいて、平成25年度は前年度までの調査で計測したポリュクレイトス《鉢巻きする人》と、ポリュクレイトスを含む3人のギリシア彫刻の巨匠がそれぞれどれか1体をつくったとされる3体の《アマゾン》のローマ時代のコピー(いずれも原作は現存せず)、およびローマ初代皇帝のアウグストゥス肖像頭部20体の形状比較を行った。その結果、アマゾンのうち1体の足が《鉢巻きする人》の足の形状と一致し、この1体こそがポリュクレイトスの作であると確定することができた。その成果をいくつかの国内シンポジウム等に加え、5月にミュンヘン(ドイツ)のライプニッツ・スーパーコンピューターセンターでの講演会、9月にInternational Conference on Culture and Computing(京都)で発表した。またアウグストゥスの頭部に関しては、顔をいくつかの部分にわけてそれぞれを比較する手法を用いて、頭部をグループわけし、その成果を10月にマルセイユ(フランス)のDigital Heritage International Congressにて発表した。ライプニッツ・スーパーコンピューターセンター、ミュンヘン古典美術石膏博物館とは今後も研究やその成果の一般公開について、協力していくことを確認した。 ポリュクレイトスの彫像の形状比較から予想以上に良好な成果を得たので、同じ手法を他の彫刻家にも適用しようと、11月にはローマの国立博物館、ティヴォリのハドリアヌス別荘博物館で新たに古代彫刻の計測を行った。現在、その解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
作者が確定できず、1世紀にわたって論争が続いていた《3体のアマゾン》の帰属について、決定的な成果を上げることができた。これにより、3Dモデルを用いて形状比較するという美術史上の新手法が、立体美術の研究にひじょうに有効であるという明確な一例を出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3D形状比較の手法をポリュクレイトスの他の作品、あるいはポリュクレイトス以外の彫刻家の作品にも適用し、有効例をさらに見つけることが望まれる。そのため、昨年度に計測したフェイディアス作品との形状比較を試みるため、ドレスデンでフェイディアスに帰されてはいるが決定的な証拠がないいくつかの作品を計測し、形状比較する。同時に、海外で積極的に研究発表し、この新手法をギリシア・ローマの美術史学・考古学界で認知させる。
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