2011 Fiscal Year Annual Research Report
定家本伊勢物語・源氏物語の形成と展開に関する総合的研究
Project/Area Number |
23320052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 洋介 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00214411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 登朗 関西大学, 文学部, 教授 (40210538)
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Keywords | 源氏物語 / 伊勢物語 / 定家本 |
Research Abstract |
伊勢物語・源氏物語の本文異同状況を確認する校本としては、池田亀鑑『源氏物語大成校異篇』(以下『大成』と略称)、および池田亀鑑『伊勢物語に就きての研究校本篇』・大津有一『伊勢物語に就きての研究補遺篇』・山田清市『伊勢物語校本と研究』(以下「伊勢物語の三校本」と略称)がある。しかしながら今日の研究環境から見て、これらは校本としての精度が低いと言わざるをえず、また数多く現存する室町期写本のデータが組み込まれていないため、源氏物語であれば、複数存在したであろう定家本の実態を捕捉できず、伊勢物語の場合では、伝本に恵まれた天福本や武田本は復原可能であるものの、流布本(根源本)と称される一群の定家本について、ほとんど研究の進展が見られない。したがって本研究ではまず『大成』および「伊勢物語の三校本」を修正し、これまで等閑視されてきた室町期写本のデータを新たに加え、「表記・改行・音便」といった新たな視点を導入することによって、定家本伊勢物語・源氏物語の形成と展開の実相に迫ることを目的としている。 本年度はまず『大成』未収の室町期書写本2本の収集および数巻について他の室町期書写本と合わせて校合作業を行った。また以前に作業を行った「伊勢物語の三校本」のデータの入力チェック作業を行い、鉄心斎文庫や東海大学附属図書館蔵本の調査も並行して行うことで、校本刊行への準備を進めた。また新たに真名本の校異データを加えることを計画し、これについても収集と校合作業を行った。 これらの作業を進めるなかで、近年公開された飯島本源氏物語のうちの幾つかの巻が、奥入付載の定家本源氏物語の姿を留めていることを明らかにし、論文発表をした。これは本文の異同のみならず「表記」や「傍記」に注目したことによる発見であり、飯島本が定家本源氏物語を復原する上で重要な伝本であることを示したことの意義は大きいと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記したように、源氏物語については『大成』未収伝本の調査収集および校合作業を行い、伊勢物語についても鉄心斎文庫や東海大学附属図書館蔵本の調査を行い、既調査分のデータチェック作業を済ませることができた。いずれも当初の計画通りの進捗状況にあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通り、今後も源氏物語については『大成』未収伝本の調査収集と校合作業を継続し、また伊勢物語についても上記の調査および作業を継続してゆく予定である。また当初の計画に加え、伊勢物語については真名本も調査の対象として加えることにした。これも既刊の「伊勢物語の三校本」のデータ入力および再調査を行っているところであり、今後もこの作業を継続するとともに、未収伝本の調査収集や逸文の収集作業を行った上で、校本として刊行できるようデータ整備を行うことにしている。
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