2012 Fiscal Year Annual Research Report
定家本伊勢物語・源氏物語の形成と展開に関する総合的研究
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23320052
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 洋介 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00214411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 登朗 関西大学, 文学部, 教授 (40210538)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 定家本 / 源氏物語 / 伊勢物語 |
Research Abstract |
伊勢物語・源氏物語の本文異同状況を確認する校本としては、池田亀鑑『源氏物語大成 校異篇』(以下『大成』と略称)、および池田亀鑑『伊勢物語に就きての研究 校本篇』・大津有一『伊勢物語に就きての研究 補遺篇』・山田清市『伊勢物語校本と研究』(以下「伊勢物語の三校本」と略称)がある。しかしながらこれらには誤りも多く、今日の研究環境から見て、校本としての精度は必ずしも高くない。また源氏物語については、数多く現存する室町期写本のデータが組み込まれておらず、複数存在したであろう定家本の実態を解明する端緒がない。伊勢物語の場合では、伝本に恵まれた天福本や武田本は復原可能であるものの、流布本(根源本)と称される一群の定家本について、ほとんど研究の進展が見られない。したがって本研究ではまず『大成』および「伊勢物語の三校本」を修正し、これまで等閑視されてきた室町期写本のデータを新たに加え、「表記・改行・音便」といった新たな視点を導入することによって、定家本伊勢物語・源氏物語の形成と展開の実相に迫ることを目的としている。 本年度は昨年度からの継続作業として、『大成』未収の室町期書写本3本の収集および数巻について他の室町期書写本と合わせて校合作業を行った。伊勢物語についても岡山大学小野文庫本や東海大学附属図書館蔵本の調査を行ない、校本刊行への準備を進めた。また真名本の校異データを加える作業も継続して行ない、これについても収集と校合作業を行なった。 これらの作業を進めるなかで、承久三年定家本伊勢物語についての新たな知見を得た。同本については早くに翻刻も公開されているが、これには誤りも多く、承久三年本を復原する上での大きな支障となっている。その詳細については、次年度に論文発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
源氏物語については『大成』未収伝本の調査収集および校合作業を継続して行なっている。新たに鎌倉期書写の榊原家本源氏物語の複製も刊行され、これも調査対象として研究計画の中に入れることが可能になった。伊勢物語についても鉄心斎文庫や東海大学附属図書館蔵本、岡山大学附属図書館本の調査を行なうなどの作業を行なった。伊勢物語については、本研究計画5年の間に、『伊勢物語校異集成』(仮称)という形で、現在の研究水準での使用に耐えられる校本の出版を計画しているが、その実現に向けて順調に進展していると認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通り、今後も源氏物語については『大成』未収の室町期伝本の調査収集と校合作業を継続してゆく。またこれまで所在の確認できなかった鎌倉期古写本である榊原家本が、国文学研究資料館の収蔵するところとなり、その複製本も刊行された。これにより本計画においても榊原家本を今後の作業対象に加えることとした。また伊勢物語についても「伊勢物語の三校本」に収載されている伝本についての調査および校合作業を継続してゆくとともに、「伊勢物語の三校本」未収録の伝本について、どこまでを調査対象とするか検討し、『伊勢物語校異集成』(仮称)としてまとめるための準備作業を行なう予定である。また当初の計画に加え、伊勢物語については真名本も調査の対象として加えることにしたため、これについても校本未収伝本の調査収集や逸文の収集作業を行った上で、校本として刊行できるようデータ整備を行うことにしている。
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