2013 Fiscal Year Annual Research Report
言語の普遍性と個別性を考慮した言語障害の症状の解明とそのセラピーの探求
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23320083
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
氏平 明 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 教授 (10334012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 紀宗 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20467757)
坂田 善政 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), その他部局等, 教官 (20616461)
見上 昌睦 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30279591)
上田 功 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (50176583)
森 浩一 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), その他部局等, 部長 (60157857)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 吃音者と非吃音者 / プロセス分析 / 脳活動のパターン / 直接的言語指導 / CALMSモデル / 幼児吃音と吃的非流暢性 / 日本語と英語の吃音 / 構音障害の評価表 |
Research Abstract |
これまでの吃音と機能性構音障害の研究の積み重ねを中間報告として発表した。そして海外で構音障害の,言語学的知見に基づいた評価やセラピーを試みている研究者を招いて,講演会と研修会を催した。 中間発表は,日本音声学会の学会誌『音声研究』第17巻第2号を「言語障害(吃音と構音障害)の諸相と分析」という特集で占め,科研の分担者と協力者が,これまでの蓄積を執筆した。氏平がまえがきでプロジェクトの概要を書き,論文では母音発声の呼気のゆらぎ指標から,吃音者と非吃音者の相違が測れることを示唆した。上田は現在の構音評価の基盤であるプロセス分析の問題点を指摘した。森はこれまでの知見の吃音者の傾向をふまえて,発話の負荷を脳機能画像で分析し,新しい発話産出モデルで吃音者の脳機能の弱点を示唆した。見上はセラピーで音声学的・言語学的なアプローチがどのようになされているかを明らかにした。川合はネブラスカ大のE.C. Healey教授と共著で,吃音の5つの側面の評価を行い,問題となる側面を重視してセラピーを行うCALMSモデルを紹介した。坂田は日本語幼児の自然発話の分析から吃的非流暢性と吃音の弁別指標が単音節語の繰り返しの有無で,100モーラ1回以上の非流暢性が吃音であることを示唆した。海外協力者のUCLのM.SmithとP.Howell教授は日英語の幼児吃音の相違と吃音の判断基準を提示した。相違では日本語は内容語で,英語は機能語で多くの非流暢性を発生する。そして英語幼児の機能語の繰り返しは吃音の症状ではないことを,EPLAN仮説から説明した。年度の後半には,カナダのブリテッシュコロンビア大から,言語学者のJ.P.Stemberger教授とスピーチセラピストのB.M.Bernhardt教授を迎えて,線状音韻論に基づいた構音障害の評価とセラピーについて,構音評価表を提示公開して,3か所で講演と研修を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中間発表で,後半のセラピーモデル作成に関連する事項を整理でき,吃音の新しい評価に関するモデルは,坂田やマシューや氏平の発見から新しい形の摸索できる見通しがたてた。セラピーモデル構築に関しては,氏平や森が発見してきたことを川合のCALMSモデルの視点を取り入れて,これまでの直接的言語指導の方法を改革し,大きく修正を加えていくことで,一つの雛形が完成する見通しがある。構音障害では分担者の上田がブリテッシュコロンビア大で共同研究を進めている成果を取り入れて,25年度の講演・研修で公開された評価表に細かな修正を加えていく形で,計画の目的が達成される見通しがたった。
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Strategy for Future Research Activity |
吃音に関する評価表の作成,この評価では吃的非流暢性と発達性吃音との弁別指標を組み込む。これは幼児吃音だけでなく,成人吃音の場合も同様とする。吃音のセラピーモデルに関しては,直接的言語指導法の確立を目指す。森がこれまで試みてきた発話頭の阻止解消法を取り入れる。この方法は発話者から発話意識を外すという困難さがあるが,その方法を探していく,またこれまで見上が実施してきた直接的言語指導の方法に,氏平や森が蓄積してきた吃音者の弱点とされる音声学的・言語学的・脳機能の側面を取り入れて,従来の方法を改革修正して,より効率的な,洗練されたセラピーモデルを構築する。新しい評価表とこのセラピーモデルを幼児,学童児,成人の吃音でスクリーングを行う。構音障害は上田,バーンハート,シュテムバーガーのモデルをより日本語話者に適した評価表に微修正しても,構音障害の評価モデルとする。
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Research Products
(12 results)