2011 Fiscal Year Annual Research Report
述語の意味と叙述タイプに関する統語論からの考察:機能範疇統語論の構築を目指して
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23320089
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
長谷川 信子 神田外語大学, 言語科学研究科, 教授 (20208490)
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Keywords | 統語理論 / 時制 / 機能範疇 / アスペクト / 統語構造 / 述語の意味 / 主文と補文の関係 |
Research Abstract |
本研究課題は、[A]「事態の概念意味・アスペクト・叙述の型」を統語構造の機能範疇、特に、vPやIPの機能と役割の観点から統語的に分析し、[B]これまでのCP現象からの知見をvPおよびIP領域にも対応させ、機能範疇の役割とメカニズムを、統語論の中心的課題と位置づけ、理論化することである。 これらの目的に向け、初年度にあたる平成23年度は、[A]については、日本語の現象を中心に、出来事事象(時間軸との関連のある事象)と状態性の関係、文(主文)のタイプと時制解釈の観点から、理論構築へ向けての経験的基盤となる現象を整理し、[B]については、長谷川のこれまでのvPに関する(特に、littlevが持つ素性の)研究を始点に、その上位にIP(もしくはvP)のSub-headとしてアスペクト層(Asp)を設ける可能性を追求し、vP内部の述語の素性(状態性や完了性telicity)との関係(主要部間(vP-AspP-IP)および指定部要素の解釈)を統語操作の観点から、主要部移動と関係する指定部の有無に言及した理論的仮説を構築できると見通しを立てた。また、研究遂行上の体制構築として、今年度は、国内外での学会参加や研究打ち合わせ(講演会)を通し、仮説の検証を他言語との比較も視野に入れて国内外の研究者との協力者と意見交換の体制などを構築し今後2年間の研究基盤とした。具体的には、主文と補文の関係と機能範疇の時制解釈の関わりを示し、国内外の学会や研究会で発表した。また、「状態性・恒常性・総称性」と統語構造の関係では、テイルを含めた統語的「状態素性」の意味と機能、その存在が認可する副詞的要素の関係を、述語の意味構造(統語的にはvP内の構造として明示)との関係で一般化を捉える形で研究を進行させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「述語のアスペクト」と「文のアスペクト」の関係が、統語的な(AspPと想定している)機能範疇の存在と深く関わるとの「研究計画当初の想定」が、テイルの現象やその存在により認可される副詞、文全体の時制解釈現象により裏付けられるとの確信を得ることができ、かつ、その仮説を英語はじめ他言語で検証する道筋も、国内外の研究者との研究協力体制を構築することにより、可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の平成24年度には、国内の研究者との意見交換、研究会を中心にテイルと述語の意味、状態性と関わる素性を認可する機能範疇を特定する。また、海外の研究者として、UCLAのStowell氏(時制と関わる統語的範疇の研究を先見的に提唱)の知見を受け、日本語と英語との比較検討を進める。 最終年度の平成25年度には、国内外の研究協力者を含めたワークショップを開催し、本研究課題を日本語、英語だけでなく、他言語にも言及して考察を深め、「統語構造と時制・アスペクト」の関係に理論的提案を行う。
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