2012 Fiscal Year Annual Research Report
述語の意味と叙述タイプに関する統語論からの考察:機能範疇統語論の構築を目指して
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23320089
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
長谷川 信子 神田外語大学, 言語科学研究科, 教授 (20208490)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 統語構造 / 時制 / 機能範疇 / アスペクト / 文タイプ / 述語の意味 / 主文と補文の関係 / カートグラフィ |
Research Abstract |
本研究課題は、従来、意味論(型式意味論、語用論、語彙意味論)を中心に考察されてきた時制や(文および述語の)アスペクト現象が、(i)どの程度、統語構造や操作に帰結できるか、(ii)言語間に見られる違いを説明できるか、を考察するものである。その課題に対し、本研究では、Rizzi(1997)他で提唱されている階層化された機能範疇構造(いわゆるカートグラフィ構造)想定し、[A]事態の概念意味・アスペクト・叙述の型、[B]文のタイプの両面から、文全体の時制やアスペクトの解釈を導く分析を目指している。 平成24年度は本研究の2年目だが、1年目の成果を受け、時制と関わる統語分析として、統語論者の中では早くから時制と関わる統語構造を考察してきたStowell(1995)氏との意見交換を行い、氏のSyntactic Structure of Tenseの理論を、Rizzi(1997)に準じて様々な考察を重ねてきた長谷川(2010,2011)の枠組みに捉え直し、Stowellの二階建てTense構造と機能が、FinPとTensePとしてより明確な構造化が可能なこと、それにより、文のタイプ(主節としての総称文、叙述文、命令文など;従属節としての補文、時の副詞節、現象提示文(ト節)、関係節、属性記述文)を明示するForcePからFinP→TensePへの指令系統がTenseの具現としての「ル・タ」の解釈を可能にするという分析を得た(平成25年度の言語学会ワークショップで発表予定)。その分析では、Kusumoto(1990)などで指摘された、主文と従属節の時制辞解釈にみられる日本語と英語の違いは、FinPの時の値や(日本語ではTPに現れる)時の副詞の存在から導き出せることになる。 AspPとの関わりについては現時点では(テ)イルに代表される「状態性」のみの考察に留まっているが、楠本氏、語用論(会話協調原理)から時制解釈を考察している富岡諭氏を含め、統語構造と時制解釈に関するワークショップを開催し、その理論的役割分担について討議を重ねており、Stowellの完了体系の理論も含めて最終年度で考察を深める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年前の当初の計画では、文タイプと時制・文アスペクトの考察から述語のアスペクト解釈への考察は比較的容易に転用可能と考えていたが、述語のアスペクトについては、述語内部のクオリア構造などが文全体の解釈に関わることが語彙意味論分野では明確に提示されはじめており、それを統語構造にどの程度反映させるかにおいて、多少、見通しの修正を迫られている。しかし、反面、CP-TP現象については、当初予定していたKratzer理論ではなくStowell理論を用いることにより、言語間の違いに向けた取り込みが可能となりつつあることから、全体としては、「ほぼ順調」に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度であり、過去2年間で得た知見を、国内外で公表しつつ、述語のアスペクトと文(節)全体の時制・アスペクト解釈の関係、他言語現象への適用可能性などについて考察を深める。公表については、6月初旬に米国ワシントン大学での研究会で発表し、時制構造にGroundとFigureを組み込む理論を提唱しているZagona氏との意見交換を予定。6月中旬にはUCLAのStowell氏、Delaware大学の富岡氏を迎え、日本言語学会第146回大会においてワークショップを開催予定。9月にはレキシコンフォーラムでの講演(招聘)も予定。その他にも国内外での公表を目指し、成果は論文としてもまとめ投稿・出版を目指し、本研究のまとめとする。
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