2014 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語発話の時間韻律制御に見られる第一言語の定量的影響分析とモデル化
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23320091
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
匂坂 芳典 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70339737)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 第二言語 / 自動学習評価 / 韻律制御 / 音声言語教育 / 音声情報可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、母語によって異なる第二言語音声の生成・知覚現象を音声科学として理解し、教育に資するため、第二言語学習者に見られる音声生成の時間制御・知覚特性分析を目的とする。前年度までに判明している隣接音素区間のラウドネス関連量を中心に詳細な分析を進めた。日本語非母語学習者の促音・非促音聴取実験データを用いて測定したラウドネス関連指標と単語の聴取正答率との相関関係から、誤聴取傾向が顕著な速い発話における促音誤判断および遅い発話における非促音誤判断におけるラウドネス関与を分析した。この結果、隣接音素とのラウドネス落差による直接的影響ではなく、音響的計測で得られる時間長に対する知覚補正の関与が示唆された。このことから、当初考えた音韻環境を独立変数とした知覚特性を念頭に置いた検討に代え、知覚的時間長を考えた理解の必要性が明確となった。また、アジア人学習者英語音声コーパスの整理と学習者音声の評価値付与も進み、時間長と共に行ったアジア人学習者英語音声の韻律制御特性の分析では、頻繁なポーズ挿入に呼応する、初学者の句レベルの定性的な傾向把握も進んだ。 第二言語音声教育への還元を狙って進めた発話コンテキストに依存する特殊拍知覚の難易度推定については、促音部の子音長に加え先行母音区間とのラウドネス落差を変量として加えた重回帰モデルにより、促音・非促音誤判定率を難易度とした推定を行い0.55の相関値を得た。以上の計画した事項の研究遂行に加え、第二言語音声教育への積極的な展開を狙い、音声聴取印象の色彩による表現可能性についての検討を開始した。予備実験の結果、色彩が有する明度と音声の基本周波数と間の強い相関が確認できた。この結果から、微妙な韻律の違いの可視化に対し、ヒトが有する共感覚特性を利用した感性情報の利用可能性の着想を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究申請の時点では申請題名が示すように、第一言語の影響による時間制御特性の分析だけを狙いとしていた。分析を進める過程で、音声言語教育に直結した対象(日本語促音の制御・知覚)を加えたことが幸いして、当初予想された聴覚的な効果(ラウドネスが与える時間聴覚特性)の重要性が想像以上に重要であることが判明してきた。本年度は、単に影響を与えるというだけでなく音響的に計測される時間長と統合した特徴量として考えることの自然さを示すような実験結果の理解が進んだ。このことは第一言語に依存せずに知覚的に共通な重要な要素の存在を示唆し、時間長知覚に対する理解が一層深いものとなった。加えて、音声情報可視化の可能性を示すパイロット的な実験結果も得ており、音声言語教育に役立てられるクロスモーダル情報の追及に着手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度でもあり、本年度に得られた知見と可能性を生かすため、第一言語非依存性確認に向けた確認実験、音声言語教育へ展開可能性に関する検討を行う。このため、できる範囲で第一言語が異なる学習者を用いた学習実験を行い、現在得られている同様のラウドネスが与える時間聴覚特性が見られるかどうかを検証する。また、画像・言語・音声の異情報表現間に存在する共感覚について感性情報分析を行い、音声情報の可視化、教育への展開可能性を調べる。
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Research Products
(9 results)