2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320096
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岸江 信介 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (90271460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 史雄 明海大学, 外国語学部, 教授 (40011332)
田原 広史 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (30207211)
木部 暢子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 時空間変異研究系, 教授 (30192016)
半沢 康 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10254822)
大橋 純一 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20337273)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 方言音声 / 音声変化 / 地域差 / データベース化 / ヴァーチャル方言博物館 |
Research Abstract |
本研究の目的は日本列島における諸方言音声の地域差と世代差に注目し、変化の実態を解明すると同時に進行中の変化の様相をとらえ、その音声を記録・保存することである。 24年度の調査では、23年度に東日本大震災の影響を受けたため、調査ができなかった東北地方のうち、岩手、宮城、福島の各県を含め、大学生委託調査は全国47都道府県の音声調査(各県2地点×若・中・高年層3世代)はほぼ終了を目前とするまでに至った。しかしながら音声収集方法の性格上、音質や録音環境が好ましくないものも含まれることが、スクリーニング作業において判明した。25年度前半で調査員(代表者・分担者・連携研究者・研究協力者)が各自現地に赴き、臨地調査を実施することで24年度終了までに生じている空白地点での調査の補填を行う予定である。 当研究の調査は、原則として、各自分担者・連携研究者が所属する各大学の学生に音声収録の調査を委託する方法をとっているが、47都道府県をすべて網羅することが難しいため、23年度と同様、24年度では積極的に代表者・分担者・連携研究者が調査地に直接赴き、収録調査を実施した。おもに9月末に甲信越、中部地方、北陸地方を中心にフィールドワークによる調査を行った。山梨県甲府市、山梨県早川村奈良田、長野県岡谷市、同伊那市、岐阜県高山市、富山県氷見市、石川県羽咋市の7地点で各3世代の収録調査を実施した。そのほか、宮城県、千葉県のほか、集中的にではあるが、25年3月には沖縄県首里、同今帰仁、鹿児島県大島郡天城町、鹿児島県瀬戸内町で音声収録調査を実施した。 音声のデータベース化にむけて、データ整理を並行して進めつつあるが、音声データの分析も外来語発音など着手している。25年度では予定通り、全国調査を完了させ、データベースの構築と各分担者や共同研究者による音声データの分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本列島の諸方言音声の47都道府県の各3世代(若・中・高年層)を対象とした収録調査は概ね順調に進んでいる。23年度は東日本大震災の影響により東北地方を中心とした地域の音声収集を実施することができず、予定の修正・変更を余儀なくされたが、当該地域を含めた他の地域における大学生委託調査は24年度末段階でほぼ完了している。その点では前年度で遅れた分を取り戻すことには成功しているが、各地で収録した音声データをスクリーニングにかけ、録音状況などを点検した結果、録音環境などに問題などがあるものや音量が低く、収録状況が悪いものなど、音声分析用に使用するレベルの音声としては適切とは言えないものが含まれている。これらについては25年度の補充調査によって再度、収録をし直す必要がある。 音声データベース化のための音声編集作業の計画を立てているが、音声編集においては現段階で、praatによる音声編集(音声分析用)、各単語単位による音声ファイルの作成(ヴァーチャル博物館用)の2つの方法を検討している。加えて、収集が完了した地点から音声データに聞き取り作業を25年度で始めるべく、準備を進めている。 また音声編集作業と並行して進めるべき作業として、日本各地の基本母音の周波数分析をはじめ、外来語音の分析などに着手する準備も進めている。 パイロット調査として企画している南九州地方と東北地方および山陰地方から能登半島にかけての音声調査は、各地の高齢者を対象に方言音声の収録と、各地域の方言音声の地域差を見出すための調査であるが、一部、音声の収集を終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに収集した音声データの空白地点を今年度前半で埋め、全国各地の方言音声の分布と世代差を明らかにするための音声調査を継続して進めるとともにこれらのデータを利用して音声・音韻・アクセントの分析を進める。本年度は、全国47都道府県で収録した音声データの点検(スクリーニング)を早期に行い、収録された音声に問題があると思われるものは新たに再度収録地で取り直すべく、補充調査を徹底させる予定である。同時にヴァーチャル博物館にむけて音声データベース化のための音声編集作業を音声データが揃った県から進める。収録された音声データ量が厖大となっているため、音声の聞き取り作業、音声データの編集作業には相当の時間を要するが、分担者が分析を予定している部分を手分けして進めると同時にアルバイトを雇い、特に音声編集作業を進めていく。なお、音声の編集に際し、特にpraatによるデータ整理の方法については分担者間での共通理解が必要なため、会議のおりに時間をとり、praatによるデータ整理の講習会を実施する予定である。なお、今回の全国音声調査では、各地で読み上げてもらった音声調査票のなかの読み上げ項目をすべて各地の方言に直してから読み上げてもらうという方法を採ってはいない。 この点で各地の方言音声が前面に押し出されたものとはなっていないため、特に基本母音やアクセント、モーラ・シラビーム等の分析においては各地の方言ベースでの発音がどうしても必要となる。このため、出雲地方―能登半島間の漁村、南九州地方や東北地方の各地の方言音声、奄美地方を対象とした方言音声の収録フィールド調査を継続して行う。
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Research Products
(19 results)