2013 Fiscal Year Annual Research Report
実践的な読解教育実現のための日本語学習者の読解困難点・読解技術の実証的研究
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23320107
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
野田 尚史 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究・情報センター, 教授 (20144545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 陽子 福井大学, 国際交流センター, 准教授 (30397286)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 日本語学習者 / 読解 |
Research Abstract |
主に日本とヨーロッパに在住する日本語学習者を対象に,日本語を読みながら理解した内容やわからないことを母語で話してもらう調査を行い,たとえば次の(1)から(4)のような点を明らかにした。 (1) 実際の読解では,日本語教育での学習内容にはない語彙や文法,表記が多く現れる。そのため,上級日本語学習者でもインターネット上のレストランのクチコミでよく出てくる「イマイチ」「お手頃」のような語彙や,「沢山」「頂く」のような表記がわからないことが多い。 (2) 日本語学習者は,よくわからない語句の意味を語彙や漢字の知識によって推測するが,それが失敗する場合がある。「優」という漢字から人偏の「イ」を取った「憂」は「悲しい」という意味を表すという知識から,「優に」の意味を「不幸なことに」と誤って推測するような場合である。 (3) 日本語学習者は,文の構造や意味を学習者独自の文法によって推測するが,それが失敗する場合がある。「その述語と同じ文の中にある「~は」はその文の主語である」という学習者独自の文法によって,主語を誤って推測するような場合である。 (4) 日本語学習者は,語句や文や文章の意味を自分の既有知識によって推測するが,それが失敗する場合がある。「友人からの言語による被害を受けた場面で生じた怒りを抑制することが,友人関係満足感にとって望ましくない」という部分を,自分の「常識」によって「友人との関係をよくするために怒りの感情を抑制することが重要だ」と,まったく逆の意味に誤って推測するような場合である。 このような日本語学習者の読解研究は会話研究や作文研究に比べて遅れており,読解教育で具体的な読解技術を教えられるようにするためにも必要な研究であり,意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画どおりに研究を行い,計画どおりの成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
特に問題点はない。今後も計画どおりに研究を推進する予定である。
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Research Products
(11 results)