2011 Fiscal Year Annual Research Report
コーパス言語学に基づく司法英語の活用発信型辞書の開発
Project/Area Number |
23320119
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鳥飼 慎一郎 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (90180207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溜箭 将之 立教大学, 法学部, 准教授 (70323623)
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Keywords | 司法英語 / コーパス言語学 / 最高裁判例 / ローレビュー / 契約書 / 発信型辞書 / 活用辞典 / ESP |
Research Abstract |
1.司法コーパスの構築 当初はイギリスとアメリカの最高裁判所の判例を50万語ずつ収集しコーパスを構築する予定であったが、分析の精度を向上させるためにコーパスのサイズを2倍以上に増強し、イギリスの最高裁判所判例1,242,656語、アメリカの最高裁判所判例1,139,952語をコーパス化した。更に英米の大学院における法律家養成課程の実態に鑑み、新たにローレビューのコーパスを構築することとし、イギリスの代表的なロージャーナルを1,135,346語、アメリカのロージャーナルを1,141,299語コーパス化した。これによって司法英語の調査対象が大きく広がることとなった。 2.司法の専門語義で使用されている一般英語の抽出 いくつかの英和辞書でパイロット調査を行い、最終的にはOxford English Dictionary(1989)でlaw useと表記されている全ての語2806語とそこで提示されている3183の司法の専門語義を抽出した。これによって一般英語が司法の専門語義で使用されている語が、歴史的スパンで収集され、通時的、共時的語彙データが獲得されたことになった。 3.専門知識の収取 北京で開催された国際応用言語学会、京都での英語コーパス学会、本研究テーマに直結した数多くの研究会へ参加し、最近のコーパス言語学の動向や辞書研究の世界的な流れを把握し、本研究の意義と必要性と先進性を確信した。ランカスター大学では最先端の研究者の協力を得て本研究に必要なコーパスの構築方法の教授を受け、ケンブリッジ大学では法律学や司法関係者、法律英語の教育に携わっている同大学の付属機関の教員関係者と意見交換をし、本研究を今後の進め方や辞書化に向けての貴重な助言を得た。 4.活用発信型辞書の記述モデルの確定に向けての調査研究 コーパスを基に辞書を編集に携わっている研究者、辞書編集家、関連分野の研究者との意見交換をし、辞書における具体的で有効な提示方法、その背後にある言語学の諸理論の習得に努めた。その結果、どのようにして本研究の成果を辞書として具現化してゆけるのか、どのような提示方法が可能なのか、どのような提示方法が有効なのかがより明確になってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は英語教育学およびコーパス言語学を専門とする大学の教員と、英米の法律に精通し、実務的な教育実践を経験した新進気鋭の英米法学者との共同研究であり、両者の本研究における相互補完的役割分担が研究遂行上うまく機能しているためである。お互いの専門知識、研究上の人的ネットワーク、視点・論点の相違、研究背景の違いが本研究の質を高め、司法英語のESP教育・研究の新たな発展を可能にしており、本研究はこの種の研究の今後のひな型となることを強く予感させるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.本研究の成果の実効性と実用性を高めるために、新たに英文契約書のコーパスを構築する予定である。これまでの調査で、市販の契約集に付属のCD-ROMや、立教大学で契約しているデータベースから入手できるデータ、またオンラインで無料で公開されたデータベースの契約書式などから、データを収集できるとの見通しがたった。 2.データ処理等の技術的な問題に関しては、東京外国語大学の投野氏から専門的な指導を受けることになっており、平成24年度は一般語の司法語義での使用実態を中心に研究を進め、その結果をコロケーション、構造文法、フレーム意味論などを使って分析し、辞書化への足掛かりを固めてゆく予定である。 3.大学英語教育学会、英語コーパス学会、その他の関連学会でこれまでの研究成果を発表する所存である。本年10月にはランカスター大学のリーチ教授を、11月にはバーミンガム大学のハンストン教授を立教に招聘し、コーパス言語学、英文法、フレイジオロジー、パターングラマー等につき直接両教授から指導を受ける予定である.
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