2011 Fiscal Year Annual Research Report
《山本憲関係書簡》に残る康有為の従兄康有儀等の手紙からみた近代日中交流史の特質
Project/Area Number |
23320151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
吉尾 寛 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (40158390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 雲喬 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (40263967)
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Keywords | 中国 / 変法派 / 自由民権運動 / 山本憲 / 梁啓超 / 康有為 / 汪康年 / 王照 |
Research Abstract |
【1】実際の研究に用いる複製版資料の作成 ○《山本憲関係書簡》の内、本研究主題に関係する書簡約450点を選定し、それらを専門の会社に依頼して一点ずつデジタル撮影し、それをもとに複製版を作成した。規格は、2000万画素でRAWデータ・約30MB、オリジナルデータTIFF16bit・約150MB、活用データJPEG・約5MB、PDF・5MB、約2000コマを撮影した。内、▼中国人の書簡(約280通)は、変法派の領袖の親書(約250通):汪康年、梁啓超、王照、康有為、羅振玉、葉瀚等著名な変法派人士の親書。:山本憲の漢学塾(梅清処塾)に学んだ康有為の従兄「康有儀」をはじめとする中国人門生の親書(約220通) ▼他方、日本人の書簡は、中国人との交流に向かわせた山本憲自身の思想的前提、その交流を支えた人的ネットワークの核心部分に限定する観点から、自由民権運動家の書簡、「大阪事件」関係文書、その他山本の代表的著作『燕山楚水紀遊』・『東亜事宜』等80点を撮影した。 【2】書簡の楷書による復元 ▼中国人の書簡:殆ど全て草書・行書で書かれているため、吉尾寛と研究分担者周雲喬、ならびに研究協力者数名が、まずそれぞれの問題関心に沿って、随意に解読作業に入った。書法等の関係図書を活用して「康有儀」の書簡(スタートの本年度は約60通)の復元から着手する。楷書体で復元した書簡の内容は、中国近代史を専門とする2~3名の研究協力者が評価し、必要に応じて、従前より応募者が当該《書簡》の読解に関して指導を仰いできている専門家等を招聘して教示を乞う。 ▲日本人の書簡については、中国人書簡の梗概が判明した後進めることとし、本年度は着手を見送った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)本科研の経費によって、「山本憲関係資料」が実物の状態を損なうことなく、実際の研究に供することができるようになったことが、先ず大きな成果である。『山本憲関係資料目録』(高知市立自由民権記念館発行)にもとづき、2000コマを超えるデジタル複製資料は、本科研の代表者(HD+DVD)、分担者(DVD)、協力者(DVD)、高知市立自由民権記念館(HD+DVD)、顧問(DVD)のみならず、ご遺族(HD+DVD)のもとに置いた。とくに、公的に受託保管する民権記念館では、研究者が基本的に自由に本資料を閲覧・複写できるようになった。 2)2011年9月11日代表者以下、分担者、研究協力者ならび高知市立自由民権記念館関係者が一同に会した。代表者(吉尾寛)・分担者(周雲喬)・連携研究者(小幡尚)の外に、研究協力者として高知近代史研究会 公文豪会長、四天王寺大学 呂順長教授、三重大学 東京大学 小野泰教助教が主な作業にあたるとともに、高知市立自由民権記念館には資料(デジタル複製を含む)の運用・管理の面で引き続きご協力いただき、全体について京都大学 狹間直樹名誉教授に顧問をお願いし指導・助言を仰ぐ研究体制が整った。 3)2)の会議の中で、当該資料の内、清末変法派の書簡(汪康年、康有為、梁啓超、王照等)は、中国、台湾の公蔵機関を含めて未見の貴重資料であることを直接確認された。とりわけ、山本憲の門人となった、康有為の従兄康有儀の書簡は、日本に亡命した変法派のネットワークとそれによる活動の具体を考察する超一級の資料と判断した。その上で、本年度は各メンバーがそれぞれの関心に沿って随意に解読を進めることにした。 4)安徽大学歴史系との共同研究の具体的計画を決定する予定であったが、2011年末当大学の主任が急逝する不幸があり、その協議は次年度に見送られた。またこの点に関わる科研費(旅費・宿泊費)も承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)H24年に繰り越した国際共同研究に関する件、即ち日本の側の成果と今後の方針について、本科研代表者等が直接中国・安徽大学歴史系を訪問して説明し、共同研究の分担・成果公表等の方法に関する協議を行う。 2)清末・変法派の書簡の解読を最重要課題とし、とくに康有儀書簡の解読作業に徐々に重点を移行する。 3)日本人の書簡、ならびに山本憲の漢学塾およびそこでの中国知識人との交流を表す書簡の複製を作成し、順次解読作業を進める。
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Research Products
(5 results)