2013 Fiscal Year Annual Research Report
《山本憲関係書簡》に残る康有為の従兄康有儀等の手紙からみた近代日中交流史の特質
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23320151
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
吉尾 寛 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (40158390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 雲喬 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (40263967)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国史 / 日本近代史 / 日中交流史 / 自由民権運動 / 変法派 / 康有為 / 梁啓超 / 山本憲 |
Research Abstract |
1)前年度に引き続いて、『山本憲関係資料目録』(高知市立自由民権記念館発行)にもとづき、約1300コマをデジタル撮影し、複製資料を作成した。規格は、2100万画素でRAWデータ・約30MB、オリジナルデータTIFF16bit・約150MB、活用データJPEG・約5MB、PDF・5MB。本年度は日本人書簡を中心に撮影した。高知の自由民権運動の研究を専門とする共同研究者の方からご意見等をいただき、具体的には、▼山本憲の家族、父山本竹渓(小野湖山、田中光顕、深尾家、藤沢南岳等からの書簡)、▼山本憲の門生・友人(漢学者、政治家)・親族等(青木晋、伊藤陶山、茨木定興、今井貫一、大井憲太郎、大島常蔵、緒方拙齋、柏岡武兵衛、柏原益次、片岡完二、片岡ふみ、川田瑞穂等)からの書簡、ならびに▼「漢学研究会」、「芸備日々新聞社」(漢詩の添削指導)とのやりとりを記載した書簡を撮影した。本複製物も、当科研の代表者(HD+DVD)、分担者(DVD)、協力者(DVD)、高知市立自由民権記念館(HD+DVD)、顧問(DVD)、ならびにご遺族(HD+DVD)のもとに置くとともに、自由民権記念館において研究者が本資料を基本的に自由に閲覧・複写できることに供した。 2)同じく、前年度に引き続き、安徽大学歴史系との研究交流を進めた。とくに本年度は、7月に安徽大学歴史系の共同研究者3名を高知大学に迎えて解読作業の現状・課題について意見交換するとともに、高知市立自由民権記念館において康有為書簡の実物等を直接確認した。 3)2013年9月より、近代の日中交流史の専門家に新たに共同研究者として加わっていただき、山本憲の代表的著作の一つ『燕山楚水紀遊』の書き下し文・現代日本語訳の作成に専ら従事していただくことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)本研究の中心である康有儀の書簡の解読は、前年度までの成果をふまえて、予定どおり、全体の約9割の楷書化と書き下し文の第一次草稿を完成することができた。 2)上記の作業を通じて、他の日本の機関で収蔵されている山本憲の書簡との突き合わせも行われ、当時山本が、戊戌の政変により日本に亡命した清朝の変法派の意思をふまえつつ、時の総理大臣大隈重信に書簡を送り、自らの対東アジア外交政策を明らかした。日本の自由民権運動の、いわば後期(大日本帝国憲法制定以後)の東アジア諸国との関係に関する思潮を解明する具体的な一歩を踏み出させたと考える。(後掲「研究発表」欄) 3)『燕山楚水紀遊』は、19世紀末の日本人の訪中記録―とくに日本の漢学講学史ならびに後期(前述)・自由民権運動史のありかたを視野に入れた訪中記録として重要な歴史文献であり、その日本語訳に着手できた意義は大きい。 4)ただし、目下本研究の代表者が本務校の管理職(学部長)に就いているため、「ミッションの再定義」・「大学改革実行プラン」に関わる大学行政に予想以上に追われ、その結果、年度最終の安徽大学歴史系との作業確認の機会を逸することになった。誠に残念であり、この点は次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿ったこれまでの作業をふまえて、本研究の成果公表に向けての具体的な準備に入ることが、今後の最も重要な推進方策であると考える。 1)平成26年度内に当該資料のデジタル撮影を終了させ、本研究の主要な目的の一つを達成する。 2)変法派の書簡の内最も貴重な史料である、山本憲の門生で康有為の従兄康有儀の書簡釈文の第一稿を完成し、それをもとに、成果公表のための出版作業に入る。また、前年度より開始した山本憲の著作『燕山楚水紀遊』の日本語訳の草稿を完成し、同じく、成果公表のための出版作業に入る。 3)19世紀末変法派が中国から山本憲に送った書簡の便箋、封筒、切手等を、同時期の日本人書簡のもの、さらには20世紀の中国人書簡のものと工学的な比較分析を行う。このことは当初より予定されていた計画であるが、その結果を以て出版内容の特色化を図る。 5)前年度の課題として残した安徽大学歴史系の作業の確認を行う。本研究代表者、あるいは(代表者が校務のため出張できない場合は)分担者が当大学を直接訪問し、その歴史系の改組後の新執行部と成果公表の仕方等について直接意見交換を行う。その際、「山本憲関係資料」の内容からみた19世紀末から20世紀前半にかけての日中交流史の特徴に関する討論会開催を提案したい。
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