2011 Fiscal Year Annual Research Report
新出土契丹文字資料・モンゴル文字資料に基づくモンゴル史の再構成
Project/Area Number |
23320155
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
松田 孝一 大阪国際大学, ビジネス学部, 教授 (70142304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 倫 龍谷大学, 文学部, 教授 (30288633)
松川 節 大谷大学, 文学部, 教授 (60321064)
井上 治 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (70287944)
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Keywords | モンゴル史 / 白樺文書 / 契丹文字 / 文化財保存修復 |
Research Abstract |
研究代表者の松田をはじめとする2010年にモンゴル国で発見した文字資料(ドルノゴビ県エルデネ郡の1058年契丹大字碑文1件,ボルガン県ダシンチレン郡ハルボハ城址遺蹟出土16~17世紀白樺樹皮文書60件)の研究権を有している。本研究は,これらの資料及び関連資料について,その発現・出土状況の確認,保存・修復,内容の解読と歴史的研究を行い、モンゴル史において史料的制約から十分に明らかにされてこなかった二つの時期,すなわち1)チンギスハン登場以前の11~12世紀,2)14世紀後半~17世紀半ばまでの歴史像を再構成することを目的とする。13~14世紀のモンゴル時代史とこれらのその前後期の新出資料の時代との連続性についても比較検討を行うことを目的として研究を推進した。本年度(平成23年4月~平成24年3月31日)の研究実施内容は以下の通り。詳細は、本科研『2011年活動報告』、以下『2011活動報告』に掲載した。まず、5月松川、6月松田はモンゴル国で新たな発掘をオチル・(モンゴル国立遊牧文明研究所)と現地で連携して実施、白樺文書などの新資料を発見した。11月から3月にかけて、2010年と2011年発見の白樺樹皮文書等の資料の保存を(財)元興寺文化財研究所保存科学センターで実施、研究推進の基盤を整備。8月松川は,契丹文字研究者武内康則(日本学術振興会特別研究員,大谷大学)とともに牛根靖裕の補佐で契丹大字碑文のモンゴル歴史博物館にて解読研究を進めた。同月松田、村岡、松川はオチルとともにモンゴル国にて碑文、岩壁銘文資料を調査、写真撮影を行い、資料収集を進めた。1月、松田は、九州鷹島で発見されたモンゴル時代の沈没船の情報を収集した。モンゴル時代史の新出資料情報を収集した。村岡は、モンゴル時代史について検討を進めている。また『2011年活動報告』を編集した。井上は,白樺樹皮文書の保存・保護処理について助言し,文書の解読研究に着手、また中国での同種資料調査を実施し、大阪国際大学での研究会にて報告した。研究協力者のオチル(モンゴル国際遊牧文明研)は,白樺樹皮文書の出土状況を確認し、遺蹟の新発掘を支援。11月来日してモンゴル国での新発見資料について公開講講演会と研究会で報告し、モンゴルでの新発見資料の情報を日本の研究者と共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主たる要素である、モンゴル国発見の白樺樹皮文書の保存と研究、契丹大字碑文の研究そのものについては、白樺文書の保存処理は済ませ、写真撮影についても行った。研究はこの分野の第一人者である研究分担者の井上治が中心になって順調に研究を推進している。契丹文字碑文については研究分担者の松川を中心としてこの分野の研究者の協力を得て、碑文文字の細部の調査を進めて研究の基盤の整備が進めることができた。両資料を結ぶモンゴル史の通史的な展開についても松田孝一、村岡倫の研究も文献資料等の調査が進められている。Webでの公開を当初は計画したが、新発見資料は、保存処理が年度終わりまでかかったこと、新出資料という観点から当面公開することが難しいため、研究の推進にあわせて行う必要があると考えられること、この両面から公開には至っていない。2012年度以後検討したい。それに代わる活動報告書の公刊を準備しており、2012年度早々の時期に発行する。これによって研究状況の公開については達成したと言える。資料研究とその公開という2側面からみた場合、本研究計画はほぼ順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の松田孝一は、以下の分担者・協力者の研究活動を総括する。研究対象である我々が研究権を有する、1)契丹大字資料(モンゴル国立博物館所蔵)、2)白樺文書資料の歴史的背景については、まず、白樺樹皮文書資料ついて、本年度モンゴル国から将来して日本国内での保存処理を行い、通常写真撮影も終了したので、写真による文書研究を井上治、松川節両研究分担者が進める。また赤外線写真による撮影を次年度予算で行い、微細部分の文書の文字確認の準備を進めた上で、同文書の現物をモンゴル国へ返還するよう手続きを進める。モンゴル国側の研究協力者Aオチル教授は(モンゴル科学アカデミー国際遊牧文明研究所)はモンゴル国内の博物館、研究機関等に所在する白樺文書の調査を実施して所在リストの作成を行い、研究協力を行う。次に、契丹大字碑文資料については、松川の指揮のもとモンゴル国で三次元デジタイザによる碑文文字の計測を実施して難読個所の検討を進める。計測には日本の高い技術を持つ経験者の協力や機材の調達が必要となるが、それについての手配を鋭意進める。 村岡倫(研究分担者)は、契丹碑文及び白樺文書の歴史学的分析、現地における調査研究を行い、この研究課題の研究成果の学界への発信を担当する。研究の進捗にあわせて日本において研究集会を海外研究者を招聘して行い、研究の進展を図る。また、モンゴル現地にて契丹~モンゴル期の文字資料・碑文資料について研究分担者による調査を行う。関連文献の収集も継続する。
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