2011 Fiscal Year Annual Research Report
メロヴィング王朝期国家構造の総合的研究-西洋古代から中世への移行新論-
Project/Area Number |
23320158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 彰一 名古屋大学, 文学研究科, 特任教授 (80131126)
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Keywords | メロヴィング朝 / 国家 / 西洋古代 / 中世初期 / 移行論 / 官職担当者 |
Research Abstract |
西洋の歴史研究において、古代から中世への移行、前者から後者への時代相の転換をめぐる問題は、史学史上にその名前を残した多くの歴史家が、18世紀以来取り組んできた最も重要なトピックであることはよく知られている。こうした移行の実相は、とりわけローマ帝国の後継国家であるゲルマン諸国家が有する特徴的な性格を探究するところから明らかになるというのが、本研究課題の前提である。中世初期西欧についての旧来の見解は、国家の基本形をアプリオリに近代国家に求めたために、ゲルマン諸国家の段階を国家不在の時代と見て、本格的な検討を怠って来た。事情はヨーロッパ学界もさほど変わらない。申請者は、以前からこうした見方を批判し、ゲルマン諸国家の国家としての真正性を承認した上で、近代国家の類型を基本に構築されたモデルと、それらの相違の中にこそ、ポスト・ローマ、中世初期国家の国家としての歴史的独自性があると考えて来た。 研究対象にフランク・メロヴィング国家を対象に設定したのは、相対的にではあるが史料が最も豊富で、研究史の蓄積が厚いというのが理由である。初年度はメロヴィング朝前半期の511年から613年までの宮廷の権力構造を、プロソポグラフィカルな手法で解明するために、先行研究で明らかにされている217名の官職担当者(Office-holders)の悉皆調査を行い、これをリレーショナル・データベースとして構築することであった。以前にこの作業の80%を終えていたが、このとき用いたソフトのバージョン・アップがなされないまま、死物となったのを承けて、幾つかの新項目を加えて、再構築するのが初年度の中心的課題であった。この作業に意外に手間取り、半年ほど遅れて作業が進められているのが現状である。その主要な障害は、139名に及ぶ王族リストの確定作業が思いのほか手間取ったことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
官職担当者217名の、一人当たり14項目の項目内容の調査と、全部で139名の国王、王息、王妃、王女の系譜および統治期間、生存期間の確定が、史料的に用意でない作業であり、これが主に遅れの主要な原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
作業の遅滞は、画期的なブレークスルーを必要とするような性格のものではなく、単純に投下しうる作業時間の確保の問題である。とはいえ、ことはそれほど単純ではなく、歴史的与件の文献や史料からの掘り起こしという手間のかかる作業をともなう。可能な限りキャッチアップに努める所存である。
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Research Products
(11 results)